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第12章 第1話(2)

 世間話も交えつつ、ひと通りの聴取が終わったのは五時まえくらいだっただろうか。中途半端な時間ではあるが、いまさら須藤たちと合流する気にはなれない。そもそも最初から合コンとわかっていれば、誘いに乗ることさえなかっただろう。  新宿署を出た群司は、そのまま青梅街道から靖国通りの方角へと足を向けた。兄の残した情報の中に、歌舞伎町界隈を根城としている違法薬物の売人のことが記されていたからだ。  さすがに薬物を売買している現場に遭遇することはないだろうが、街の雰囲気だけでもざっと見ておいて損はないはずである。そんな軽い気持ちで足を運び、気の向くままぶらついてみたのだが、夕暮れ時という時間帯もあって、次第に夜の街ならではの雰囲気が濃厚になっていった。  ホストクラブの呼び込みにうちの店で働かないかと勧誘を受けること数度。キャバクラや風俗店のキャッチに声をかけられること数度。さすがにこの辺が限界かと引き上げようとしたとき、路地の片隅でおなじように声をかけられている人間を見かけた。 「お兄さん、メチャクチャ美人だね。なにそれ、整形とかじゃないよね? 天然物? よかったらうちの店で働かない? お兄さんだったらすぐ売れっ子になれるよ」 「そういうの興味ないんで。どいてください。用事があるから」  その声と口調に聞き覚えがあって、思わず振り返った。 「え~、用事ってなんの? ね、時間はとらせないからさ、ちょっとだけ店で話聞いてくんない? ほら、中入ろ? なんだったら美味しいお酒奢るよ?」 「いらない。やめ…っ。放せ! 俺はそういうんじゃないっ」  店の中に連れこまれようとしていたのは如月だった。把握した途端、群司は向きを変える。 「あ~っ、やっと見つけた!」  大股に近づきながら、周囲にも聞こえるようわざと声を張り上げた。 「先輩、なにやってんすか。メチャクチャ探したんですよ? ちょっと目離した隙にいなくなっちゃって」 「あ、え? やが……っ」  群司の存在に気づいた如月が目を見開いた。 「ほらほら、もうみんな待ってますから。会場あっちでしょ」  店の従業員があきらかに不満そうに舌打ちをするのを無視して、群司は如月の腕をとると歩き出した。そのまま、大通りまで出てタクシーを捕まえ、如月を乗せて自分も乗りこむ。運転手に如月のマンションの住所を伝えると、腕を組んでリアシートにもたれた。隣に座る如月は、ひと言も口を利かなかった。

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