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第12章 第2話(4)

「すみません、べつにふざけたつもりはないんですけど、とりあえず俺がそういう気持ちでいるっていうことだけは知っててほしくて。あの、変な意味じゃなくて、あなたを大切に思ってるっていう、そういう意味で」 「……そんなふうに言われても、俺にはどうにもできない」 「いいですよ、あなたの気を引きたくて言ってるわけじゃないから。ただ、なにかあったときに俺がいるってことを思い出してほしいんです。俺、全力であなたを守れるように頑張りますから」  ゆっくりと如月に近づいた群司は、適度な距離を保ちつつ傍らに膝をついた。 「今日、琉生さんがあそこにいたのって、どうして?」  その質問をするために、いまの話の流れを作ったことに気づいたのだろう。如月はハッとしたように群司を顧みた。 「偶然、あの辺にいたわけじゃないですよね? あそこで、なにしてたんですか?」  如月は途端に気まずそうな顔をした。 「そんなこと言ったら、おまえだって……」 「まあ、そうですね。俺も偶然じゃないです。新宿署に寄った帰りなんで」 「新宿署?」  怪訝そうに尋ね返す如月と目線を合わせながら、群司は隣に座りなおした。 「今日ね、藤川を見かけたんです」 「え?」 「まえに会社のまえで刃傷沙汰を起こした例の男です。あのあと彼、いなくなっちゃったっていう話だったでしょう? それが今日、たまたま街中ですれ違って。場所は渋谷だったんですけど」 「渋谷?」 「ゼミ仲間に誘われて、飯食いに行く途中だったんです」  やはり今日も、マンションに来るつもりはなかったのだと、如月の表情が沈んだ。 「すみません、なんかここには来づらくて。早く謝らなきゃって思いながらもなかなか勇気が出なくて、迷ってたタイミングで誘われて、つい了承しちゃったっていう」 「べつに。おまえは学生なんだから」  その口調が拗ねているように聞こえるのは、願望のせいだろうか。そしてそれを嬉しいと感じてしまうのだから、我ながら重症だと思う。 「でもそのおかげでこうして琉生さんと会えたから、よかったです」  (てら)いのない言葉を口にする群司に、如月の頬がかすかに染まった。

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