136 / 234
第12章 第2話(5)
「で、話を戻すと」
言いながら、群司はポケットからスマホを取り出して画像データを開いた。
「店に向かってる途中ですれ違いざまに肩がぶつかった人がいて、それが藤川だったんですよね」
大島に提供してきた画像を如月にも見せる。如月は身を寄せるようにして画面を覗きこんだ。
「だいぶ人相変わっちゃってますけど、本人ですよね?」
群司からスマホを受け取ってじっくりと画像を眺めた如月は、たぶんそうだと思う、と頷いた。
「大島さんの意見も、間違いないだろうってことでした。で、そのあとはもう飯食い行ってる場合じゃなくなって、その場でキャンセルして追っかけたんですけど途中で見失っちゃいまして」
素人に尾行は無理でしたと群司は笑った。
「すぐに大島さんに連絡して渋谷署の人たちまわしてもらったりしたんですけど、到着まで間に合いませんでした。なので、あとのことは警察の人たちに任せることにして、俺のほうは駆けつけてくれた大島さんと新宿署に行って、くわしい状況説明をして。歌舞伎町まで足を伸ばしたのはそのついでです」
如月の差し出すスマホを受け取りながら、群司は反応を窺った。
「兄貴の残したデータの中に、歌舞伎町界隈で違法薬物を扱ってる売人のことが載ってたでしょう? それで、街の様子だけでもちょっと見ておこうかなって思って。もしかして琉生さんも、おなじ理由だったんじゃないですか?」
如月はしばらく黙りこんだ後に、仕事だから、と答えた。
「なにか、わかりました?」
「……なにも。すぐに変なのに捕まったから」
「そりゃ琉生さんみたいな人が歩いてたら、目立ちますって」
「おまえだって充分目立つだろ」
「ん~、でも俺の場合は、店で遊んでかないかとか、そんなキャッチばっかりだったから。それで収穫ないなって思って諦めて帰るとこだったんですけど、あのタイミングで会えてよかったです」
群司に声をかけられたときのことを思い出したのか、如月は決まりが悪そうに口を引き結んだ。
ともだちにシェアしよう!