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第13章 第2話(1)
週末、あらためて創立記念パーティーについて確認すると、如月も招かれているとのことだった。
「ひょっとして、例のプロジェクトメンバーは全員参加になってるんですか?」
「わからない」
薬理研究部での仕事がメインになっている如月は、マージナル・プロジェクトの中では異端扱いで、他のメンバーとの交流はほぼ皆無だという。
「まあ俺の場合、薬理研究部でも孤立してるけど」
開きなおる如月に、群司はぶはっと吹き出した。
「そんな自虐的に言わなくてもいいじゃないですか。琉生さんが会社の人たちと馴れ合わないのは立場的にやむを得ないんですから、それでいいんですよ」
「でもきっと、おまえが俺の立場だったらもっと普通に輪に溶けこんで、うまくやってたと思う」
「しょうがないですよ、人それぞれ性格が違うんですから。琉生さんのキャラで万人にフレンドリーにっていうのは無理があるでしょ」
群司が笑うと、如月は不満そうに口を尖らせた。
「俺だって好きでこういう性格なわけじゃない」
「いいんです、琉生さんはいまのままで。これでみんなに愛嬌振りまくようになったら、俺が気が気じゃないんで」
言った途端に色白の顔が耳もとまで赤くなった。
「あ、愛嬌なんて振りまかない!」
いつものようにリビングのローテーブルで解析作業を進めていた群司の胸を、如月はポカンと叩く。群司はそれを受け止めながら、さらに笑った。
兄の動画を見てからと言うべきか、その件で一度関係が拗れてからと言うべきか、如月との距離は確実に縮まったような気がする。優悟という存在を喪い、その彼に託されたものをともに背負う覚悟を決めたからなのか、如月の群司に対する態度は以前よりずっと軟化していた。ピリピリと張りつめたものがなくなって、素の表情を見せてくれることが多くなったように思う。群司もまた、如月に対する気持ちを自覚してから迷いが消えたので、いい意味で相乗効果に繋がったのかもしれない。
群司の気持ちを知ってなお、如月はその存在を受け容れている。どちらかというと仲間意識とか、同志といった感覚に近いのだろうが、時折示すようになった好意に、恥ずかしがることはあっても嫌悪や拒絶を見せることはなかった。
以前は群司に対しても作っていた壁を取っ払って、心を開いてくれているような気がした。
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