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第13章 第3話(3)

「あなたがいてくれてよかった。あなたのおかげで兄貴は最後までひとりじゃなかった。それから俺も、亡くなったあとも変わらず兄貴を想ってくれてるあなたに救われた」  少し妬けるけど、と群司は笑った。 「あなたには感謝してます、心から」  如月は一度きゅっと口唇を噛みしめると、小さな声で「俺も」と呟いた。 「優悟さんを喪って、ひとりで行き詰まってたときにおまえが現れた。もしおまえと出逢わないままあの動画を見つけていたら、たぶん、耐えられなかったと思う……」 「俺も少しは、あなたの役に立てた?」  如月は頷く。 「支えになれた?」  もう一度頷く如月を、群司はさらに引き寄せた。 「あなたに出逢えて、よかった」  囁くなり、首を傾けてその口唇にそっと口づける。如月はその行為を受け容れた。 「あなたが好きです」  やがて口唇を離した群司があらためて想いを告げると、口づけの余韻を残した如月の目もとがうっすらと染まった。その反応が可愛くて、あなたは?と尋ねた。 「そういう意味の『好き』を受け止めてくれる程度には、想ってもらえてると思っていい?」 「き、嫌いじゃない」  あくまでも素直になれないその応えに、思わず笑いが漏れた。途端に如月の頬が羞恥に染まる。 「最初に大嫌いって言われてるんで、今回はそれでよしとしておきます」 「あれはっ」 「いいです。琉生さんがツンデレの照れ屋さんなのはもう充分知ってるんで。俺はそんなところも大好きですよ?」 「ツンデレじゃな――」  反論しかけた如月の口唇を、ふたたび言葉ごと奪う。「んっ」と声を呑みこんだ如月は、口腔内に侵入してきた群司の舌に翻弄されて、瞬く間に理性をとろかされていった。  舌先で口蓋をくすぐり、絡めた舌を吸い上げて甘い吐息ごと存分に味わう。下唇を甘噛みすると、腕の中にある躰がビクリとふるえた。そんな反応のひとつひとつが愛しくてたまらない。  特殊な状況に置かれた関係の中で芽生えた感情を勘違いしているのだと如月は言った。だが、こんなにも愛おしいと思える存在を、群司はほかに知らなかった。  愛しくて、大切で、そばにいるだけで心があたたかくなる――

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