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第13章 第4話(2)
「え? 俺なんか、気に障ることしました?」
さらに群司が間合いを詰めると、アームレストギリギリまで追いこまれた如月は、それ以上身動きが取れなくなって縮こまった。
「し、してない。なにも。部屋、が……」
「部屋?」
スーツの上着を脱いだ、ワイシャツ姿の肩に手をまわすとビクッとふるえる。
「部屋が、きれいだから……」
いったいなんのことかと首をかしげかけた群司は、すぐにその意図を察してなんだと笑った。
「先週は何度か足を運んだんですけど、今週は一度も来てなかったですからね。っていうか、普通に通ってたときも、ちゃんときれいにして帰ってたでしょ?」
「そう、だけど、なんかちょっと、いつもと違う」
「まあ、出入りしてなかったから、生活感が消えてたのかもしれないですね」
言いながら、白い頬を指先でスルリと撫でる。その感触に怯えるように、如月はギュッと目を瞑って首を竦めた。
「いつもと違うって、それ、部屋のことだけ?」
思わせぶりに顔を覗きこむと、それ以上は耐えられなくなったのか、如月は群司の胸を押し返して思いっきり遠ざけた。
「いま、そんなこと言ってる場合じゃないっ」
最初にそういう話の流れに持っていったのは如月のほうなのだが、さすがにこれ以上しつこくかまうと怒り出しかねない。群司は諸手 を挙げて降参した。
「すみません、今日の段取りについてですよね」
群司がいつもの調子に戻すと、如月はホッとしたように緊張を解いた。
「と言っても、音声分析の結果も上がってこなかったんで、とりあえず今日できるのは、出席者の顔触れを確認して、使用者リストと擦り合わせるくらいですかね」
「おそらく天城顧問を通じて、そのうちの何人かと面識を得ることになると思う」
「当然、そうなるでしょうね」
群司も同意した。
「まあ、適当に話を盛り上げて、今後に繋げられるよう自分を売りこんでおきます」
フェリス使用者との直接の繋がりができれば、情報も得やすくなる。
「それが天城側の思惑でもある。あまりやりすぎなくていい」
釘を差す如月に、群司は了解ですと応じた。
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