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第14章 第3話(2)
「もしもし」
『ああ、八神くん? よかった、やっと繋がった』
電話の向こうで、大島が安堵の声を漏らした。
「すみません、何度かお電話いただいてましたか? ちょっと立て込んでいたもので」
『ああ、うん、それはいいんだけどね。ちょっと気になることがあって』
「気になること?」
『じつは、さお――如月さんのことなんだけど』
「えっ!?」
思った以上に大きな声が出た。
『さっき、二時間くらいまえに電話がかかってきて、君に紹介した池畑音響研究所の連絡先を訊かれてね。その、仕事のこととかいろいろ事情は聞いたけど、だいぶ急を要しているようだったからなんとなく気になって』
教えるのはやぶさかではないが、群司は承知しているのかと尋ねると、もともと自分が頼んだことで、これ以上巻き込めない事情ができたので、あとのことは自分のほうで対処すると答えたという。
『もちろん彼もプロだから、外野がとやかくいうことではないんだけど、切羽詰まっているというか、どことなく思いつめているような感じがしたんで、一応君にも報せておこうと思って』
「ありがとうございます。連絡いただけて助かりました」
群司は心から感謝を述べた。
用件はそれだけだと告げる大島にあらためて謝意を伝えて通話を切ると、案の定、池畑音響研究所からも何度か着信が入っていた。すぐさま画面をタップして折り返す。まるで待ちかまえていたかのように、ワンコールも鳴らさないうちに相手が応答した。
「あの、八神です。すみません、すぐに電話に出られなくて」
群司が名乗るなり、池畑は挨拶もそこそこに本題に入った。処理する案件が多すぎて平日だけでは対応しきれず、休日返上で出勤していたのだという。
案の定、如月は池畑のところへ電話をかけ、音声解析の進捗について問い合わせていた。
『随分お待たせしてしまいましたが、昨日の夜遅くに解析結果がまとまったので、週明けにでもご連絡しようと思っていたところでした』
そのことを伝えると、如月は直接研究所に足を運んで、その場で解析結果を確認したという。
『如月さんのことは事前に八神さんから伺ってましたし、ご本人も身分証を提示されて、きちんと身上を明かされたので問題のない範囲で結果をお伝えしたんですが、データはお渡ししてません。依頼主はあくまで八神さんになりますので』
ありがとうございますと群司は礼を述べた。
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