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第15章 第1話(1)

 松濤にある天城邸は、豪邸が建ち並ぶ高級住宅街にあってひときわ異彩を放つ、白亜の大豪邸だった。  白壁に囲まれた敷地は都心の一等地とは思えないほど広大で、正門には複数名の警備が立ち、招待客を出迎えている。いっそ城と言ってもいいような、個人宅とは思えない荘重たる構えを見せていた。  時刻はまもなく二十時。  入り口で招待状を提示した群司は、敷地内に足を踏み入れたところで一度立ち止まり、あたりを見渡した。見事にライトアップされた庭園の正面には大きな噴水が配されていて、その向こうに白亜の邸宅が浮かび上がる。窓という窓から漏れる照明の光が、壮麗な造りに絢爛たる華やぎを添えていた。  開放された両開きの正面玄関の向こう、大きな吹き抜けとなっている大ホールには煌びやかな装いの貴顕淑女がさざめいている。外国の様式を取り入れた建物は、靴を履き替える必要もなくそのまま邸内に踏み入れることができた。  パーティー会場として開放されている正面ホール、その奥にある大広間、そしてダイニングと移動していく中で、大物俳優や政治家、有名スポーツ選手など、メディアを通じて目にする著名人たちがこれでもかというほど目に留まる。ワイングラスやシャンパングラスを片手にあちこちで談笑している姿に、嫌でも緊張が高まっていった。いずれも、リストで目にした顔触ればかりだったからだ。  やはり私邸でのパーティーには、上得意ともいえるフェリス使用者たちが招かれている。日本人のみならず、外国人の姿もそれなりに見受けられ、今日の盛況ぶりを伝えるために集められた報道陣も、あちこちで精力的に取材活動を行っていた。  祝宴がスタートして二時間。招待状には終わりの時刻は書かれていなかったが、終盤に近づいている雰囲気はどこにもない。百人単位は軽く収容できるだろう大広間では、設けられている壇上で楽隊が美しい音色を奏でていた。  どこを見ても有名人だらけで、見知った顔はいくらでもあるが、実際の知り合いとはまだだれとも行き会っていない。如月はどこかと探しつつ、ほかに招かれている天城製薬の社員はいないかと確認しながら奥に進んでいくと、窓際の一角にひときわ華やかな集団が集まって盛り上がっていた。何気なく見やって、そのまま足を止める。輪の中心にいたのは、シャンパンゴールドのゴージャスなイブニングドレスに身を包んだ、天城瑠唯だった。  意図したわけではなかったが、群司が人だかりを覗きこんだことで目が合う。途端に天城瑠唯は、「あら!」と驚いたように目を瞠った。 「遅くなって申し訳ありません。本日はお招きいただいてありがとうございました」  天城瑠唯の反応に、集まっていた人々が道を空けるように左右に移動したため、群司は自分から天城瑠唯の許へ近づいて挨拶をした。

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