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第15章 第1話(3)
「せっかくだから、皆さんにも紹介しますわね」
天城瑠唯は上機嫌で周囲を取り囲む人々に視線を向けると、群司に注目が集まるよう傍らに立って慣れた様子で紹介をはじめた。
「こちら、八神群司くん。桂華大学の学生さんで、来春から我が社に入ることが決まってますの。入社したら、マージナル・プロジェクトのメンバーに加わってもらうことが決定していますのよ」
天城瑠唯の言葉に、周囲からどよめきが起こった。
そうよね?と同意を求められて、群司は控えめに「はい」と頷きつつ、ここにいる人々は皆、社内でも極秘扱いのプロジェクトの存在を知っているのだと感情が冷えていった。それでも表面上は、そんな心情をおくびにも出さず、落ち着きはらった態度で挨拶をする。
「はじめまして、八神と申します。現在、学生の傍ら、天城製薬のバイオ医薬研究部で研究アシスタントをさせていただいてます。その関係で就職も決まり、このような場にも呼んでいただけたことを光栄に思っています。天城顧問からいただいたご恩に報いるためにも、天城製薬に入社したあかつきには精一杯精進していきたいと思いますので、若輩の身ですがどうぞよろしくお願いいたします」
群司が頭を下げると、周囲から拍手が起こった。天城瑠唯も、皆とおなじように満足げな様子で手を叩いている。
「いやぁ、いまどきの若者らしからぬ、折り目正しい好青年ですな。さすが次期社長が見込まれただけのことはある」
すぐ傍らにいた恰幅のいい紳士が、すかさず調子のいい声をあげた。「こちら、三友不動産の石田会長」と天城瑠唯がさりげなく紹介した。
「社内でも噂になるほど優秀なんですのよ。大学でもゲノム編集に関する研究に携わっているとのことで、今後にとても期待してますの」
「若くて優秀で、見た目もこんなに男前だとなにやら羨ましいですな。長岡監督の目に留まれば、研究職より俳優を目指さないかと本気で口説きにかかるんじゃないですか?」
「あら、それは困るわ。八神くんには、これからの製薬業界を背負っていってもらうつもりなんですから。皆さん、監督にはぜひ彼のことは秘密にしておいてくださいね」
天城瑠唯を中心に、華やかな笑い声があがった。
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