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第16章 第1話(5)

「私は決意した。娘を必ずこの手に取り戻してみせると。そしてこのとおり、その夢を実際に実現させることができた。気の遠くなるような歳月と想像を絶する苦労の連続だったが、一度喪われた娘の生命は、こうして私の中で完全に甦ることができたんだ」  直前の嘆きから一転、天城嘉文は歓喜に打ちふるえる。 「フェリスはまだ開発途上ではあるが、これだけの成果を成し得たことを私は誇りに思う。私の最愛の娘、至高の宝はふたたびこの世界に甦り、私と一体となってより完璧な輝きを放つ存在となった」  己の演説に酔いしれるその姿に群司は慄然とする。張りのある肌。美しく結い上げられた豊かな髪。豪奢なイブニングドレスに包まれた、見事な曲線を描く肢体。どこから見ても若く美しい女そのものの姿の中で、一点、不自然に股間が隆起していた。  群司の視線に気づいたがニタリと嗤う。 「失礼、少し興奮しすぎてしまったようだ」 「……娘さんを甦らせたはずでは?」 「そう、彼女は完璧に甦った。我々親子はフェリスの力でこのとおり融合することができたわけだが、私は別段、女性になりたかったわけではない。ただ娘の再生を望み、この身体を使ってそれを実現させただけのこと。娘でありながら、私は私自身でもある。妻もこの姿をとても気に入っている」  はじめて言及されたその存在に、群司は眉を顰めた。 「奥さんがこの状況を受け容れていると?」 「そうだとも。彼女もまた、娘を心から愛していたからね。一時は失意のどん底にいて、到底立ち直れるような状態ではなかったが、いまはとても喜んでいる」  天城嘉文は満足げに頷いた。それがかえって不自然に思えた。 「その奥さんは、どこにいるんです?」  群司は尋ねた。 「創立記念パーティーといいながら、肝腎の社長夫妻の姿は会場内のどこにもなかった。社長を見かけなかった理由はすでにあきらかですが、夫人はどうだったんでしょうね。あなたから紹介はされなかったし、女主人らしき人も見かけなかった。俺が気づかなかっただけですか?」 「いいや、妻は会場にはいなかったよ。彼女はとても繊細な心の持ち主でね。娘の死を受け容れられず、心を病んでしまった。もう何年も屋敷の奥に閉じ籠もったまま、人とは会わない生活を送っている」  病んだ心で、娘の姿をした夫だけを頼りに生きているということか……。

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