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第16章 第2話(1)

 緞帳(どんちょう)の下りたステージの内側を映すモニターの中で、藤川を閉じこめた檻ごとリングが舞台袖に下げられていく。かわりに運びこまれてきたのは、キングサイズのベッドだった。周りに複数台のカメラ機材が設置され、後方にはスクリーンも下ろされているともなれば、何をどうするつもりなのかは一目瞭然だろう。  すぐ横のモニターでは、緞帳を背に、ステージ上に現れた天城瑠唯――否、天城嘉文が観客に向かってなにごとかを語りかけていた。  幕が上がれば、あの場に如月は引き出され、フェリスを飲まされたうえで衆人環視の中で犯される。想像するだけで頭がどうにかなりそうだった。  そんなことはさせない、絶対に。  そう思うのに、パイプ椅子に座らされ、上半身と両足をくくりつけられて身動きひとつ適わない状態に群司は歯噛みした。  早くなんとかしなければ。  焦りだけが強まっていく中、緞帳が上がってホステス役の天城嘉文が袖に捌けた。  先程同様、黒服のスタッフに連れられてひとりの人物が登場する。その姿を目にした瞬間、群司の心臓は早鐘を打ちはじめた。そこに現れたのは、ガウンを纏った如月だった。  すぐにもうひとりの黒服が登場すると、最初に如月を舞台に誘導してきた男のほうが背後にまわって如月を押さえこむ。如月は抗おうとするが、力が出ないのか、弱々しく足掻いただけで簡単に拘束されてしまった。  背後から押さえた男が如月の顎に手をかけ、口を開かせる。そこに、あとから登場した黒服が白い錠剤を放りこみ―― 「や、めろ……っ」  群司の口から絶望の声が零れた。 「やめろっ! その人に触るなっ! ほどけよっ。俺をここから出せっ! 琉生さんにそんなもの飲ませるなっ!!」  絶叫して無理やり立ち上がろうとした瞬間、パイプ椅子が倒れて群司は床に叩きつけられるように転がった。 「琉生さん! 琉生さんっ!!」  足もとから崩れ落ちていく如月の躰を、黒服の男たちは両わきから抱えこんで羽織っていたガウンを脱がせる。腰回りに薄衣を纏っただけのあられもない姿。  その状態でベッドに倒れこんだ如月は、観客の見守る中、苦しげに悶えはじめた。

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