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第17章 第2話(4)

「大丈夫、逃げないで。いま楽にしてあげるから、俺に任せて」 「や、がみ……やがみっ……やだ……っ」  背後の壁に縋るように逃げようとする如月をなだめながら、群司は足のあいだに顔をうずめると、うっすらと蜜を零している昂ぶりを口に含んだ。 「ひあっ……!? やぁあ……っ!」  舌先で先端を舐めあげ、小さな割れ目を刺激するようにくすぐると、如月は躰を撓らせて弱々しくもがいた。 「やだっ……やだ……ぐん、じ……っ。やめ、て……っ」  互いに想いを通わせあった数時間前の情交とは異なり、どこか本気で嫌がっている気配を感じて群司は思わず顔を上げた。 「ごめんね、琉生さん。俺、はじめてするから、たぶん琉生さんほどうまくないよね? 俺にされるの、そんなに嫌?」  ぽろりと零れた涙を指先で拭いながら尋ねると、如月はゆるゆるとかぶりを振った。 「ち、ちが……。俺だけこんなの、みっともない……っ」 「全然みっともなくないよ。薬のせいで興奮させられてこうなってるだけなんだから。それを楽にしてあげられるのは俺だけって思ってるんだけど、琉生さんは嫌?」 「や、じゃない、けど……恥ずかし……」 「恥ずかしいから嫌なの? じゃあ、俺も脱ごうか? さすがにここでは抱いてあげられないし、だれか入ってきちゃったら言い訳できないけど、そのときはそのときってことで」  一瞬驚いたように目を瞠った如月は、思わずその場面を想像したのだろう。なにかを考えこむように瞬きをした後、唐突にふふっと笑った。その拍子に、目の縁に溜まっていた涙がさらに零れ落ちる。感情の昂ぶりからくるものというより、生理的な側面が強い印象だった。薬の力で無理やり発情させられた身体のつらさが、その反応によくあらわれていた。 「脱がなくて、いい。わかった。群司に、任せる」 「うん、任せて。口でするの下手かもしれないけど、愛情だけはたっぷりあるから」  群司の言葉に、如月はうんと頷く。 「さっき、ふたりでいっぱい気持ちよくなったでしょう? そのつづきだと思って、琉生さんは少しのあいだ、身体の内にこもってる熱を発散することにだけ集中してて?」  そう言って額にキスを落とすと、如月は自分から群司の首に腕をまわして口づけてきた。  背中に腕をまわし、頭を撫でながら差し出された舌を絡めとって如月の要求に応える。発情した身体はあっという間に昂ぶって、呼吸が乱れていった。

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