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第18章 第1話(4)

「兄貴の音声データの件で俺の行動が親父に筒抜けになっちゃったんですよね。そうなる可能性は俺も充分覚悟してたんで、そのとおりになったってだけなんですけど」  新宿警察の署長が、父と懇意にしている人物だったそうである。さらには、家宅捜索が行われた天城邸のパーティー会場に群司が居合わせたことで、複数回にわたって事情聴取にも協力している。母と群司の住むアパートに父が訪ねてきたのは、騒動から半月ほどが過ぎたころのことだった。 「その、俺からも一度、お父さんにご挨拶というか、お詫びしようか?」  手伝いを頼んだのは自分だからと申し訳なさそうに言う如月に、群司は笑って大丈夫だと請け合った。 「平気ですよ。情報を探る目的で俺が天城製薬に潜りこんだのは琉生さんと知り合うまえのことですし、そういうのもひっくるめての叱責だったんで。全部俺の責任です。親父も俺の性格はよくわかってますからね」  群司は軽い調子で言って肩を竦めた。 「それに親父も立場上、怒らないわけにいかなかったっていうだけの話で、実際のところはちゃんと理解してくれてると思います。言うほど、本気で怒ってるわけでもなかったんで。まあ、兄貴がああいうことになってるんで、母親には泣かれましたけど」  あとは真面目に学生生活を送って安心させることにするという群司に、如月はそうしたほうがいいと同意した。 「進路、は?」 「え?」 「来年……」  如月がなにを気にかけているのかに気づいて、群司はそれに対しても問題ないと応じた。 「内定は辞退したんで、また一からやりなおしですけどね。もともと本気であの会社に就職するつもりはなかったから大丈夫です」 「でも、いまからの採用枠は……」 「大丈夫。ちゃんとやりたいこと見つけましたから」  くわしい内容について聞きたそうなそぶりを見せたが、群司があえてなにも言わずにいると、如月はそれ以上踏みこもうとはせず引き下がった。 「わかった。応援する」 「ありがとうございます」  額に軽く口づけた群司は、それからと付け加えた。 「昨日、坂巻さんのお見舞いに行ってきました」  報告を受けて、如月の顔に緊張が奔る。 「まだ当面、入院生活はつづくみたいですけど、一時期に比べてだいぶ元気そうでした」  途端にその肩からほっと力が抜けた。

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