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第4話
「着いたよー。ここです」
「わあ、きれい」
玄関を開けて家の中に入ると彼は初めて表情を崩して笑った。
ニコニコしながら靴を脱いでて、やっぱり緊張してたんだなあって安心した。
コミュニケーションが取れないタイプの子じゃなくて良かった。
共有スペースのリビング、キッチン、お風呂を簡単に案内して、2階の部屋へ。
俺の部屋とは階段を挟んで向かい側が彼の部屋。
基本的な家具は揃ってるそれも、全部俺のセレクトだった。
「こんなきれいだと思わなかったです」
「まあね。うち、結構いい店だよ。えーっと、とりあえず名前決めよっか。希望ある?店の子と被らなければ何でもいいよ」
「あ、まだなんにも考えられてなくて、、どうしよう」
「そうだよね。じゃあ俺も一緒に考えてあげる」
荷物を置いてふたりでソファに腰掛けた。
右側に彼の体温を感じて手を握ってみる。
びっくりしたように大きな目でこっちを見た彼は、嫌がるでもなく、でも恥ずかしそうに目を泳がせてた。
なんかこれ、セクハラっぽいな。
俯いてしまった顔を覗き込むようにすると、恥ずかしいですって小さな声。
「うーん。なつき、とかどう?女の子っぽいかな?」
「あ、良いと思います、すてきです」
髪を撫でて顎をすくってやる。
「漢字はねえ、黒髪が似合ってるから月っていう字を入れたくて、な、な、なはどうしよう」
「あの、字の感じとか、こんなのが良いかなって、」
ぱっと俺の手を離れてポケットのスマホを取り出したなつきくんが、画面を見せてくれた。
『那月』
「いいね!似合ってる。じゃあこれで新倉さんにプロフィール作ってもらおうか」
「はいっ」
ニコッと笑った那月くんはまた嬉しそうに頬を赤らめている。反応がいちいち可愛い子だなあ。
「あ、あと、プレイの流れの説明って、新倉さんから何か言われてる?」
うちの店は同部屋のキャストが新入りさんにプレイのレクチャーをすることになってるんだけど、今日は疲れてるだろうしまた明日にしようかな。
レクチャーはどこのお店にもあって(俺調べ)他の風俗店ではスタッフがやる事もあるけど、それだと職権濫用で本番するキチガイも居るし、こういう時はこういう反応をすると喜ばれる、とか、キャストの方が活用できる技は多く持ってるからキャスト同士でって新倉さんが決めたルール。
那月くん、レクチャーの話は聞いたのかな。
「律さんの技を盗んでこいって言われました」
「ははっ、そかそか。俺は明日も休みだしいつでも良いんだけど、部屋の片付けもあるだろうし明日にする?」
「ええと、俺はこれからでも、大丈夫です」
なんだか想像させちゃったのか、また顔を赤らめてる那月くん。
虐めないように気をつけなきゃだなあ。
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