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010 俺に恋して孕ませたあいつ-10

 毎日自転車ニケツさせて貰って、竜二の背中にしがみ付いてさ。「彼氏役」「彼女役」「旦那役」「夫人」なんて、周りが面白がってるだけだからってノリで好きにさせて、目の前で生着替え。  あー今思うと俺、めっちゃ竜二の彼女みたいな事してるわ。  ジュース回し飲み、ファミレスでそれぞれの注文を半分こ、2人で映画館も行ったし、2人で服買いに行った。2人で遊園地行ったし、2人でカラオケもした。  あーあー、何だよ2人で夜景を見るって。もう、思い返しても常時肩抱かれてるじゃん俺。  馬鹿だ。俺は馬鹿だわ。全部まーったく好意だと思ってなかった。こいつ優しかった。チョー優しかった。俺にだけやたらと。  あれ全部デートだわ。うん、竜二は完全にデートのつもりだったよな。傍から見てもデート。そりゃ俺が女の子から嫉妬されるさ。間違われるさ。  よくもまあこれだけ煽り散らかしたもんだ。だから仕方ないって言う訳じゃないけどさ。 「子供ができることは予想してたのか」 「はい。今も、俊君のお腹に俺の子がいるのが、こんな……本当は許されるような、褒められた事じゃないのに、叫びたいくらい嬉しいんです。ずっと、ずっと俊への想いを隠すの辛かった……」 「竜二……」  俯いて流す涙は、どういった感情のものなのか。懺悔と、喜びと、色んな感情で心から溢れたように竜二の涙は止まらない。いや、これは多分竜二の事だから喜びの方じゃないかな。  結局、竜二の計算通りなんじゃないだろうか。俺は竜二にほだされ、子供まで宿し、もう周りも許す以外にない状況になっている。決して演技とは思わない。でも、多分これは竜二が望んだシナリオ通り。  でも、俺はやっぱり竜二に惹かれてるか、このイケメンに好かれてちょっと気分がいいとか、もうそれでいいやと思ってしまってる部分がある。  そう。  男でありたいという意地を捨ててしまったら、こいつが最高の彼氏だと気付いてしまったんだ。 「それで、どうする」  親父の声が騒がしい俺の心を静めるかのように、ゆっくりと竜二の覚悟を試す。チラリと見た竜二の横顔は、打算など何もない真剣なものだった。  ベンチに座っていた時の哀れな程の憔悴はどこへやら。目のクマやこけた頬は戻らないが、その目はしっかりと親父に向けられていた。 「あの時僕は自分だけで暴走しました。でもどうしても俊君が好きで、絶対誰にも渡したくありません。誰に咎められて駄目と言われても諦めません! どんな条件つけられても構いません! 俊君を僕に下さい! お願いします!」  竜二がテーブルに頭がつくほど頭を下げる。父親は目を丸くし、母親は手をかけたコーヒーカップを持ち上げられないまま静止。俺も悪阻のきつさなんかぶっ飛んだ。  多分、この静止したような時間は何十秒もあったんじゃないか。 「……分かった。手順は過ちだと今でも考えは変わらんが、だからと言って俊を他の男にも女にもやる気になれん」 「親父……?」  親父の顔が急に柔らかくなる。竜二が今度こそこの瞬間を待ちわびたように眉を下げ、口を半開きにして親父の言葉を待っている。 「現実的な話は改めてするとして、君に負けた。俊を宜しく頼む」 「は、はい! 有難うございます!」  やったと感慨深そうに涙を流す竜二。もう完全に負けた、といった寂しい顔の親父。素直に良かったわねと微笑む母親、竜二の想いに感動しちゃった俺。  その場にいる4人の心の中は様々だろうけど、あと数日で卒業という今日、ひとまず書類上の事は今後考えるとして、俺と竜二は夫婦になると決まった。  * * * * * * * 「俊、やっと俊をこの腕で思う存分抱きしめられる」 「俺のこと好きなんて、全然気付いてなかった」 「俊が俺に恋するように、かなり頑張ったのに。正直その辺の奴らよりいい男になったと思うんだけど」 「まあ……つか、自分で言うもんでもねえ」 「次は恋愛感情持たせようって段階で……抑えられなくてヤッちゃったけど」 「それは、もういいよ」 「本当にごめん。俊、愛してる。男のままでもいい、変わらなくていいから。はぁ……好きだ、もう死にそう」  親父から俺の部屋で、2人でゆっくり話すように言われた。竜二は俺リビングを出たとたん俺を抱き上げて階段を上り、部屋に入ってからも愛を囁くのに必死で、俺はもう抱きしめられた状態が数十分続いてる。 「ここに、俺達の子がいるんだよな」 「ああ、まだ油断できねえけどだいたい9週目くらい」 「俺、俊を妊娠させちゃったんだよ、たった一晩で。俊が好きで仕方がない時の妄想が現実になった」 「……俺そんな目で見られてたんだな」 「そりゃあそうだろ。本当はケツに入れさせて貰うつもりだったからビックリしたけど……迷わなかった。俺、どうしても俊との子供が欲しくなった。俊を絶対俺のものにするって、それしか考えられなかったんだ」 「せめてまともな時に同意させろっつうの。いきなり覚えがないまま子供出来てて悩んだんだからな」 「抱いた後、ちゃんと言えば良かった。帰らないで朝まで一緒のベッドに寝てたら良かった。本当に後悔してる。でも俺が俊に告白して、OKしてくれた? 多分断ったよね、古賀っちみたいに」 「まあね、結局一度は喧嘩になってたかも」  好き、それだけで判断出来たなら、きっと俺への告白のやり方次第では竜二を受け入れたと思う。  実際は自分の性が、自分の思ってる以上に高い壁を作ってた。女扱いされることを並みの男以上に嫌ってた俺に、告白なんかさせない雰囲気があったから。    息をするだけで女が惚れる。校門では毎日のように他校の女の子が出待ちしてる。なのに男の俺に惚れて、男をデートに誘い、男にベタベタ付きまとい、悩んだ挙げ句、我慢出来ずに抱いたとか。  俺に絶交されて死にたくなるほど落ち込み、それでも諦められずに家族になりたいと言って、今竜二はこうして俺を独占出来る喜びを堪能してるとか。笑えて来るよ。  出来婚だし、そもそも戸籍上では男同士。それでももう全然構わないと思うのは、竜二に落とされたってことなんだろう。 「……竜二、さっきから当たるんだけどよ」 「ごめん。分かってるから、萎えるまで待って」 「って逆にビクビク動いてんじゃんか!」 「押し倒したりしないからこのまま居させて?」  あぐらをかいた竜二の上に座らせられてるから、ガチガチになってるものが当たる。 「妊娠中だから」 「分かってる、でも仕方ないじゃん、治まらないんだから。このままじゃ流石にご両親に挨拶もできないし帰れない、だからそれまで……」  竜二が俺を抱きしめたまま、ベッドに横になる。  ……ああ、そうだ。あの夜、確かに俺と竜二は俺のベッドにいた。  色々思い出してきた。最初は濡れても入らなくて、竜二がスゲー焦った顔してたんだっけ。そりゃちょっとサイズがあり過ぎるもんなこいつ。 『中に出すよ、俺と俊の子供作っちゃおう』  俺がイキそうになって、竜二が優しくするのなんか忘れて激しく腰を振ったんだ。ヤバいヤバいと言いながら止められないのか、暫く押し付けるように止まった後で俺の中に出して、その後すぐまた…… 「そっか、俺、受け入れてたんだ」 「ん?」 「竜二の子供、あの時俺も出来ちゃってもいいやって、思ったんだ。2人して後先考えない猿だったなあって」 「ほんと? くっそー、今この場で俊を抱けないのがほんと悔しい! ねえ、妊娠中ってほんと駄目なの?」 「パパになりたいって言ったろ。分からんけどリスクは避ける」  ゴリゴリ押し付けてくるから分かってるよ。俺だって抱かれたい。でも、俺と竜二を繋ぎとめてくれたお腹の子を、何としてでも守らないと。  それにしても……。 「あーもう分かった、手でしてやるから! さっさとチンコ出せ!」 「俊」 「なに」 「俊の手でして貰えるの、これが初めてだね。一生忘れないでよ」 「うるせえ」

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