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019 それはあいつとの出逢い-08

 まさか。俊の手作りのおかずを貰えるなんて! 登下校は俊をしがみつかせて、昼は俊の手作り料理! 一粒で二度おいしい。俺グッジョブだわ。  あーごめん、もう1つあった。オカズって意味では三度おいしいですごちそうさまです。  俊は俺が何を考えているかなど全く知らずに、Win-Winの関係だと笑ってる。分かってないな、俺の大勝利だよ。  相変わらずまだ乗り慣れてない俊を後ろに乗せ、最高の気分で学校に到着。必然的に教室に行くまでは一緒だ。今日から朝も夕方も、俺が俊を独占できるんだ。 「はよーっす」 「湯川ウイッスー、あ、福森も一緒だ、2人で一緒に来たんか?」 「おはおはー。朝さ、竜二が通りかかって乗っけてくれた」 「ふーん、ラッキーじゃん」 「明日から竜二がアッシーしてくれるって言うから、代わりに俺が昼飯のおかず1品やるってことで取引成立した」 「はー!? なにそれウケるわ。『毎朝一緒に行きましょっ』『俺にしっかり掴まってろ』って、ラブラブのカップルかよマジ笑う」  クラスメイトが数人、俺たちが朝一緒に登校することになったのを早速からかってくる。ラブラブ? カップル? もっと言ってくれていい、大歓迎だ。  そうやって、登校も一緒、席も隣、お前ら急激に仲良くなり過ぎと大爆笑をされていると、とうとうクラスメイトの1人が俺と俊の鞄についたヤメルンジャーマスコットに気付いた。 「あ! ちょっと待って? 何これ。お前ら、これお揃いじゃん!」 「ああ、これ、俺が俊にやった。な?」  もう俺たちは親友だぜ! と宣言するように俊の肩を抱き、ピースをする。ノリのいい俊が、それに乗っかって、こいつ手懐けるのチョロかったわなんて笑う。 「『登下校は一緒だよっ』『カバンもお揃いのマスコットなのっ』って、何なのそれ湯川は彼氏なの?」  彼氏……そう、彼氏だ。 「そ、俺彼氏だから。俊の彼氏の座は渡さねーよ? 今日も一緒に帰りましょぉね? 俊子ちゃん♪」 「そうね、竜子ちゃん、あたしたち親友だもんねー!」 「お前らそれじゃどっちも彼女じゃん、馬鹿かよ」 「彼氏とか彼女とか、チンパンジーには難しい設定だったな」    まさか俺が本気で彼氏の立場を望んでるとは誰も思っていないだろう。俊さえも。  皆はどんどん調子に乗り、終いには初夜はいつでしたかとか、やっぱりそういう話になっていく。  それに対してノリで色々と話を合わせていたら、流石に行き過ぎたのか、俊が待て待てと制止した。 「ちょっと、竜二が彼氏なら俺も男だから彼氏だし、何で俺が抱かれる側みたいになってんの。暗黙の了解みたいになってねえ?」 「は? えーだって委員長の方が可愛いじゃん。普通に考えて湯川が突っ込む方っぽくね?」 「いやいやいや、そこ譲れねーから!」 「竜二のチンコでかいからな」  心なしか、俊は真顔に見える。もしかしたら俊はこういうネタはあまり好きではないのかもしれない。昨日も可愛いと言われるのはあんまり好きじゃないと言っていたっけ。  でも、このままだとせっかくの『俊の彼氏』っていうキャラが確立されなくなってしまう。ここは……うん、俺が下がるしかない。つかその程度真の彼氏(予定)として受け入れないとな。 「えー俊、俺のこと抱きたい系? どうしてもって言うなら……あたしそれでもいいわ! 彼女になるわ! それに初めてなの、優しくしてね?」 「キモイキモイ、湯川無いわそれ。つかいちいち女口調ぶっこむのやめれ」 「あ、可愛い顔して実は凄いぜ、みたいな? マジか、福森そっちか」 「そもそも、お前らが男って時点で何も成立してねーから! どこにも彼女いねえから!」  お約束のように、ああしまった、と俺が頭を抱えるしぐさをしたところで笑いが起こる。本当の彼氏彼女ではなく、あくまで彼氏役。  役柄を演じているという見方をされているなら好都合なんだ。全ての行動がネタに見えるなら、堂々と俊とイチャイチャできる。 「でもさー、湯川ってめっちゃイケメンじゃん? 福森ってさ、なんつうか可愛い感じじゃん?」 「もう、可愛いって言うな馬鹿」 「あー、福森って確かに見た目だけなら……ちょっと化粧したら全然イケんじゃね? 女の格好したら男とか簡単に騙せそう」 「いやマジ今度の文化祭さ、お前女装しとけって、最優秀出店賞になったら俺ら学食2週間タダになるじゃん」 「助けて福森さま!」 「焼きそば定食がかかってるんです福森様!」 「なんで炭水化物主食にしておかずで炭水化物取ろうとすんだよ」  この流れもどうなのか分からないけど、話の主体が俊から文化祭に、そして文化祭から学食タダ券に移ってるから結果オーライ、か?  しかしこいつら、俊の事を化粧しないとイケないとかふざけてんじゃねえぞ。このままで可愛いじゃん。化粧無しでご飯も炊飯ジャーまるごといけるだろ。 「湯川に執事の格好とかさせてさ、他校の女の票を稼ぐ」 「それ美男美女でウケるくね? 福森まじいけるって」 「中身めっちゃ男だけどな! こんな女いたら絶対勘弁してほしいわ」 「はぁー? つかマジ可愛い言うの禁止」 「そうだぞ、俊に可愛いって言っていいのは俺だけだから」 「はい出ました彼氏発言~、マジうざいー」  このクラスが何をするのかまだ知らないけど、本気でメイド喫茶するなら……俺と俊で執事とメイドの格好して客を迎えるとか、ありがちだけどいいかもしれない。  なにせ、ネタ的にここ男子校だからな。俊の女装が見れるなら、俺も女装する覚悟はある。  ああ……でも、俺もご主人様って言われたい。 「可愛いだろうな……」 「ほら、彼氏が言ってるじゃん、俊してやれって」 「マジお前ら付き合っちゃえよめんどくせー」 「あははは!」 「はあ? もう付き合ってるしぃ~。ねー!」 「湯川のこんな姿、女が見たら死ぬだろうな……」

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