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020 それはあいつとの出逢い-09
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「いやあ、あの頃さ、まさか本気でお前らが付き合うとは思ってなかったよな」
「ほんと、つか子供まで出来るとか予想無理だし!」
俺は浪人して入学した大学を無事卒業し、社会人になった。今日は、高校の1クラスしかなかった普通科の同窓会だ。
欠席しているのは仕事で海外に行っている1人と、古賀っち、それと俊だけ。みんな、俺と俊の出逢い、そして結婚までをセッティングしてくれた大切な同級生だ。
掘り炬燵式の座敷に、集まっているのは35人とヤマセン。勿論、全員男だ。
「玲士くん何歳だっけ、もう6歳くらい?」
「そ、小学生になった。今日はうちの実家で暴れまわってるはず」
本当は出会った初日から俊を狙っていたんだと告げると、驚きの声も上がる。生粋のホモじゃないと分かっていたから、あの「彼氏役」も本気だと思われなかったんだろう。
「それよりさ、古賀っちだよ! 卒業の日さ、俊の事が好きだったって言ってたじゃん。竜二も知ってたらしいけど。それからすぐ彼女作ったと思ったら、とうとう来月結婚とか」
「ライバルが竜二じゃなかったらあいつもそこそこだし。婚約者が妊娠してるからって、今日来れないの残念だよな」
「それを言うなら俊も来てないじゃん。どうよ」
「あー、うん、大丈夫そう。今回も自然分娩いけそうなんだよね」
今、俊は腹に子供を抱えていて、そのせいで今日の同窓会には来ていない。本人は大丈夫と言っているんだけど、8か月を過ぎた腹で来るのは危ないからと止めたんだ。
「玲士くん、あと歳士くん、次も男の子?」
「そ、女の子が欲しかったんだけどね」
実は玲士が2歳の時……俺が一浪して大学2年の時。本当に避妊はしっかりしていたけど、俊は再び妊娠してしまった。
俺は当然学生だし、稼ぎだってバイト代程度。両家に何て言われるかと思ったが、俺の親父が「生きているうちに孫が見れるなら」と背中を押してくれた。
こうして同級生と会ったり、俊の話をしていると、今でも俊と出会った頃を思い出す。
あの初恋は今でも続いている。俊を抱く時は、あの出会った頃に出来なかった妄想でのセックスを実践している気もする。
俊の小柄な体に覆いかぶさり、抱きしめる。その体勢のまま俊の中に俺のものを侵入させ、キスをしながら腰を打ち付ける。
一度二度イっても許さない。そうして、俊の理性を奪う。次第に俊も腰をくねらせるようになる。
気持ちが良すぎると泣き出すのが堪らなく可愛い。2度の出産にも耐えた綺麗なラインの腰、そして平らな腹、母乳があまり出なくて使い込んでいない胸(多分俺の方が吸ってる)……全身で俺の欲情を誘う俊。
若い二人が夫婦として認められたなら、毎日とまではいかなくとも性欲のまま全力で……いや、全力だったのは俺か。
「もう3人目が出来てるとか、ホントお前ちょっと落ち着けよ、どんだけ好きなの」
「俺、未だに俊が可愛くて心臓止まりそうになるもん。2人目出来た時もさ、ゴムつけたまま毎回妊娠しろ、妊娠しろって思ってたよ俺。子供可愛いぜやっぱ、何でも許せちゃう」
「25歳で3人の親とか、お前ら何人作る気なんだよ」
「経済的にいければ何人でも。もう出来たって聞く瞬間とか、幸せで倒れそうになるから。理性と本能がどっちも子作り推奨してきて家族計画全然上手くいかない」
「お前委員長以外ホント眼中にないもんな」
「ああ、無いね」
「惚気るよな、毎回。どんだけ福森のこと好きなんだよ、身を固めるの早過ぎだろ」
「もう俊も湯川だから、湯川俊だから。同性婚が出来る世の中になるとか、想像すらしてなかった」
俺は俊しか愛せない。俊以外の奴に触れるなんて絶対に御免だ。カッコつけたいけど、俊は親友としての俺も知ってる。甘えた姿も見せられるし、居心地もいい。
「竜二、スマホ鳴ってる」
「あ、俊から」
「早く帰って来て? ダーリン♪ ってか? もうお前らいい加減にしろよ、仲良すぎるだろ」
「もしもし……え? は? ……え、うっそマジ!? わかったすぐ帰る!」
電話は俊からだった。早く帰って来てねとか、様子伺いの電話なんてもんじゃない。
「どうしたん?」
「俺……帰る。俊が、子供生まれそうって、予定日まだ全然先なんだけど」
「うわー! ちょ、スタッフー、スタッフゥー!」
「スタッフじゃねえよ、先タクシー呼べや! 誰かタクシー呼んで!」
「どうかしたん?」
「子供、俊の腹の中の、3人目の、生まれそうって」
「「マジで―!?」」
俊の体が両性具有で、実際には男の機能の方が殆ど働いておらず、子供をつくれる体なのは全員が知っている。だからそれだけで話を理解してもらえる。
「竜二! いそげ!」
担任だったヤマセンに軽く挨拶をし、座敷を後にする。店の前で待機しているタクシーに乗り込む時、ふと2階の会場を見上げると、同級生の何人もが窓を開けておめでとうと叫んでくれた。
その時ふと届いたメールを見ると、誰かが知らせたんだろう、古賀っちからのメールで3人目おめでとう、生まれたら誰より一番に写メ送れと書いてあった。
その日、日付が変わる直前、俊は超安産で無事に3人目の子供、紅士を産んだ。
頑張った俊に声を掛けると珍しく自分から抱きついてくれたが、流石に出産は交通事故に遭うようなものだと言われているように、血の気はなく、起き上がる事も出来ない。
相性がいい俺達だから、何人でも欲しいけど……無計画だと俊は毎年子供を産む事になりそうだ。
俺は俊を満足いくまで抱ける日が数えるほどしかない事になるから……今後の子作り計画は俊に任せないといけないかな。
「竜二」
「ん?」
「次は……次こそ絶対女の子産んで見せるから」
「えっ」
まったく。
本当に、俊にはかなわない。こんな男らしい奴は滅多にいない。出会った頃からそう、この愛しい人は俺が一番尊敬する男でもあるんだ。
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紅士が生まれてから2か月が経ち、アパートには荷物が届いた。
大きな段ボールを開けると、中身は人形も飾られたオムツケーキ。それに「貧乳の湯川俊様へ」というメッセージカードがついた哺乳瓶が3つ、「旦那様は我慢してこれでもしゃぶって下さい」というメッセージが付けられた酢昆布が1箱。
差出人は、あの元同級生たちだ。何で酢昆布……
古賀には紅士が生まれた日、子供の写真を一番に送った。あっちもそろそろ生まれるんじゃないかな。
でも、ごめん。
俊の子供を真っ先に撮って、1番に他人(親)に送ったのは兄貴だ。あいつ、俺が俊を労う横で、先に産まれたてをバカ高いカメラで撮ってたからな。動画もしっかり。
「おとうさん! あたらしいほにゅうびんで、ぼくがミルクあげていい?」
「いいよ、おかあさんに貰っておいで。さ、歳士はちゃんと座って俺とご飯な?」
「やー! ミルクあげる!」
「竜二」
俊が、子供を呼ぶ時とは違う、いつもの少し格好つけたような、親しげな口調で俺の名前を呼ぶ。
「ん?」
「竜二の仕事落ち着いたら、その……そろそろ」
ああ、そうか。
「仕事は落ち着いたよ、俊が大丈夫なら……今晩、ね」
あの高校時代の登下校のように、ほんのわずかな時間。
子供の親として精一杯頑張ってくれて、俺が少し家の事をするだけで有難うと言ってくれて。有難うって言うのは俺の方なのに。
そんな俊も、俺の腕の中に居る時だけは、俺だけが独占できる、俺だけの愛しい人になるんだ。
出会った頃の君と、俺の記憶。こうやって家族として過ごす俺達。
またいつか思い出す記憶となるであろう今日この瞬間も、そして何十年後、思い出す時も、俺の恋はきっと終わってない。
そう、これは俺と好きな人との、素敵な恋のお話。
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