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第180話

あの頃の気持ちに (ジュンヤ) その33 男にやり返したのが観客の興に乗ったのか拍手が沸き起こっている。あの男、まだつきまとってるのか、おまけに潤の口ぶりでは日本に帰ってから相変わらずセックスもしてるのか!……ムカムカしてきた俺はスタッフ3人に外に連れ出された金髪野郎の後を追いかけた。 「 どうするの?」 潤が執念く聞いてくるが答えてやる気は全くない、とにかくこのイライラをどうにかしないとならないとそればっかりだった。 流石に正面の店の入り口からは出せないのか、スタッフルームの廊下の先の裏口から外に行くらしい。 途中渋谷君に、 「 え?青木さん、そっちはエンプロイオンリーですけど 」 と言うのに片手を上げて止めるなとジェスチャーしながらそのまま俺も4人と共に外に出た。 外に出るなり掴まれた腕を振りほどいて喚き立てる金髪を宥めるのは神崎さんらしかった。 街灯の乏しい裏道で諍いの声は響く。 英語でまくし立ててる金髪野郎は俺が近づくと嫌な笑いを浮かべて俺を指差した。 「 この、クソ親父は自分の息子に入れ込んでる、ジュンヤのケツを追っかけ回してるんだ。俺よりこっちの方がやばいんじゃないか?」 と言うなり俺に失せろと指を立てた。 俺が後ろからついてきたことに驚くようにスタッフが振り向く。 金髪野郎が英語で言ったことを半信半疑に思ってるのは神崎さん以外の3人の様子でわかったが、 神崎さんのもうやめろという制止を払いのけたその腕が神崎さんの鳩尾に入ったのを見た瞬間、身体が自然と動いた。 掴みかかったまま狭い路地で殴り合ったと知ったのは、相当な数の傷を負ってからだった。 「 なにやってるんだよ!」 ジュンヤが怒ってる顔がすぐそばにある。其れが半分紅く見えるのは瞼が切れたせいか…… 昔、面白半分でテコンドーや格闘技の真似事に通っていたから、受け身には慣れていたせいであまり酷いダメージはないと思っていたが。 最後に食らった脇腹への一発は俺を立てなくするには十分なようだった。 ところで金髪野郎はどうしたんだ? 「 あいつは?」 「 そんなのどうでもいいだろう! 立てる?とにかく店に入るから 」 と俺の腕を肩に回すと隣に来た渋谷君も大丈夫ですか?と言いながらもう片方の腕を取った。 思わず痛みにうめき声が出る。 なんなんだこれは。

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