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第192話
あの頃の気持ちに(ジュンヤ)
その45
性急に俺のジッパーを降ろそうとするジュンヤ。
ダメだろう、ここはAクラスのホテルの駐車場。
案の定揉め事かと感知した警備員がやってくるのが見える。
「 ジュンヤ、離せ。ガードマンが来るから 」
首にかじりついたままの腕を強引に振りほどくと、ジャケットの合わせ目から際どい位置になんとか張り付いてるブリーフと生足の下腿が俺の両目を刺激する。
後部座席のひざ掛けを取りジュンヤの腹に掛けた瞬間に警備員から声がかかった。
「 お客様、どうかされましたか?
警備室より連絡があって、アクシデントがあったのでは?」
あー、確かに。
本館のエレベーターから廊下を走って地下のパーキングに行くエレベーターに乗り換えた時に目撃されたのか。
俺は車外に出るとジュンヤの姿が警備員から見られない位置に立つ。
「 すみません、連れがエレベーターの中で急に具合が悪くなって、急いでここまで降りて来たものですから 」
俺の年齢と相応しいジャガーXE S 。
そしていつもの打ち解けながらも重い口調が功を奏したか、警備員も慇懃になった。
「 そうですか、それなら救急要請しますか?」
と聞いて来たのを丁重にお断りした。2名の警備員のうち若い方がそれとなくジュンヤの方をじっと見ていたが幸いジュンヤも寝たふりをしてくれたので、
「 それでは気をつけてお帰りください 」
と去っていってくれた。
安堵の溜息と共に車を出すと待ち構えていたようにジュンヤがひざ掛けの下から手を出して来る。
運転席に腰を下ろしている俺の内腿をいやらしい指遣いでさすりながら歌うように紡ぐ言葉が、
「 どこでやる?ここ?俺車の中って萌えるんだけど 、それも本革のシートって、冷たい皮が肌に張り付くときゾクゾクする 」
これだよ。
お前の象牙色の身体が俺の車の赤と黒のランダムに組み合わさったシートに脚を開いて横たわる姿を想像して思わず猛りそうな下半身を制御する。
「 少し抑えろ。今からいい所に連れてってやるから 」
「へ〜いい所?
俺、今日夜ステージあるから遠いところは勘弁な 」
「 いつまでに帰りゃいいんだ?」
「 後2時間くらい 」
「 はぁ⁈ 」
結局バックドア近くの中野のチープなラブホテルに入る羽目になった。
こんなとこなん年ぶりだよ。
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