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第200話

あの頃の気持ちに(ジュンヤ) その53 俺の作った塾、誠明会サピオは 何年かかなり前のお受験フィーバーに乗って成長した。 経営者、青木真名彦という名前は教育界ではちょっと名が知られるようになったが、最近は少子化により所謂進学塾はより先鋭化させて規模を小さくせざるおえなくなっている。 俺の会社も地方の小さい規模の塾を吸収しそれなりに拡大したが今は転換期を迎えている。 地域の子どもたち、学習の遅れた子、母子家庭父子家庭で生活がままならず学習まで行かない子を地域でどう守っていくかという、俺たちのやってきた事とは全く異なった強いニーズが社会から浮かび上がってきているのに官庁側の流れはなかなかそういう方向には行っていない。 菅山ともその事でよく議論するが、補助金云々を待っているといつになるかわからないとはやる菅山に、俺は経営が成り立たないとかえって子どもの未来を混乱させることになると説得する。 いつもこの一点、経営としてやっていけるかどうかで二人の話は頓挫している。 夏に京都の講習会で文科省の連中と会う機会があったが、教育にはなかなか予算がつきにくいと渋い顔を拝んで終わった。 御茶ノ水にある10階建の本社ビルの塾長室から外を眺める。 公私ともに転換期が来たわけか。 子どもの教育とはかけ離れたネットワークを持つ何社かに声はかけていた。そのうちの一番具体性がありそうな一社から今日連絡があるはずだ。 文科省がだめならと厚労省に働きかけてくれた仲介の代議士も多分上手くいくんじゃないかと言ってくれた案件。 10代向け支援サービス検索・相談サイト の運営団体が大手のsnsサイト日本支部の支援を受けることになりそうだという話を野党の代議士が俺のところに持ってきたのが去年。 実際に運営するとなると教育での実績がある会社にある態度のカリキュラムを、作ってもらいたいという事だった。 ちょうどいい、菅山にも朗報になるはずとその話を進めて来た。 そして、子どもの食、健康、身体の方の支援ができるであろう企業とこれから話を進める。うまくいけば、補助金を期待しなくても経営もしっかりとした大きな子どもの支援団体が立ち上がる。 公の方の未来は確かな手応えを感じた。

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