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第201話

あの頃の気持ちに(ジュンヤ) その54 インターネット回線での長い会議が終わった。 良い感触を掴んだ俺は早速菅山に連絡をする。 新入学直後ですぐにゴールデンウイークに入るから慌ただしいと言いながらも、夜は開けられるという事で二日後に会うことになった。 そういえば、菅山とはあのバックドアのジュンヤのライブの後連絡もしていなかったな。 「 いい話なんだな 」 「 あぁ、手応えはあった。多分纏まるだろう 」 「 纏まる?なんの話だ?」 俺は菅山と落ち着いて話ができるように、飯田橋にある割烹料理屋の個室を取った。 掘りごたつの座卓になっている席に腰を下ろすなり菅山が聞いてきたのはどうやらジュンヤのことらしい。 「 おいおい、今夜わざわざ席を取ったのはそっちの話じゃない。俺とお前のこれから仕事の話じゃないか 」 ふーっとビールのグラスを煽り一息ついた菅山。 「 わかった。でもその前にお前決めたのか?」 「 ああ、俺の腹はあいつに会った時から決まってる 」 「 そうか、それなら何も俺に言えることはないな 」 何も決まってないのに菅山相手に格好つけた俺は誤魔化すように先を続ける。 「 それで……」 料亭の個室で夜が更けるまで今後の話をした。菅山も長年の夢がもうそこまで来たことにいたく感激した様子だった。 暫く色々な関係省庁や団体との交渉に明け暮れて気がつけばジュンヤからの連絡もない、俺の方も連絡せずに二週間が経っていた。 忘れていたやつから連絡が来たのは夜遅くバーにで一杯ひっかけて帰るかという時間だった。 「 ハッロー 」 「 ……潤か…… 」 「 よくわかったね、偉いじゃん。忘れられてるかと思ってたよ 」 「 あぁ、忘れてたよ 」 「 ひっどーい! それはそうと、打ちのめされてるんじゃないかと思って慰めるために連絡した僕を褒めて 」 「 何言ってんだ 」 「 がっかりしてるのはそうでしょ 」 「 知ってるのか?」 「 勿論! ドイツ 」 「 潤は、今はどこにいるんだ 」 「 俺?俺は、アメリカ。エドと一緒だよ 」 「 仕事は?」 「 俺ってば優秀だからさ、ちょっと名の知れた研究所にもう入り込んだよ」 笑いながら話す潤が懐かしいなんて、ジュンヤに繋がればなんでもいいのか、俺は。

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