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第8話
a memory from summer no.1
職場編 その1
「え?
夏休み中、に研修ですか?
私の年で?
それも、三泊四日?も?」
「ああ、うんまぁ」
と言いながら限りなく怪しい眼をした、教頭。
「もっと若い先生、例えば柴田先生とかの方が……」
「いや、今回はベテランの教諭を対象にした講習なんだわ」
ベテラン…
確かに俺はベテランだけど。
「教えるテクニックは、進学塾の方が上だからな…ベテランほど、若手にも指導できるようにこの際、研修受けた方が……」
「わかりました。わかりました。わたしが行きます。
それで、1人でですか?」
「うーん、……」
限りなく怪しい……
「俺 とだ」
「は?」
「だから、僕、と、」
「教頭先生はもう研修の必要、ないでしょ!行くなら、私は同輩の先生と」
「いやいや、この研修、俺の友人の塾経営してるのに…頼んだ、あ、いや、そこからの誘いで、一応、俺もね、後学のために」
「なんで、教頭先生が後学なんですか!」
「いや〜引退してから、塾にさ、教えに行こうかな?なんて。ははは」
その年で、塾の講師は務まらん!と舌まで出かかって、飲み込んだ……
この〜企んだな……
「そんな、綺麗な顔で苦虫つぶしたような顔しないの、」
誰がさせてるんだ!
心の中で罵倒して、
三泊四日のそこはかとなく感じる、身の危険の防御、を考えることにした。
夏休み前は教員はやることだらけで、身を削りながら日常を全うしていっているので、
その出張のことはすっかり頭から抜けていた。
「明後日、俺の車で行くから」
「え?と、なんでした?」
「研修だよ。忘れてたの?」
そうだった。研修だった……
俺はその研修の三泊四日をパートナーに伝えてないのを今、思い出した。
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