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第9話
a memory from summer no.2
恋人編 その1
「え?夏休みに?」
「そうです、夏休みに、シンガポールへ」
あの日以来、休みの度にうちの居間に居座ってる俊からの発言は、
「君も行くか?」
「どうしてむすこを誘うんだ?」
「僕が?一緒に?」
なぜか、急速に俊のほうだけ打ち解けてコミュ苦手な息子とも話すようになっていた。
「うん、 海外は何人かで行った方が、面白いからね。
タクシー1台に乗れる4人くらいで行くのが効率的だし、
レストランもそのくらいの方が色々頼めるし」
理由があってないような、そんな理由で(^。^)'…
マイペースなやつだと思ってたけど、年をとって、更に磨きがかかったな。
うーんと、唸っていた杏果だが、
突然思い出したように
「あっ!
僕、夏は忙しいんです」
「何?1週間くらい休めないほど?」
「えーと、さつ、撮影会で 」
言い澱むわけがわかった俺も一緒に
2人で目を白黒させてると。
「なんだ、2人揃って、挙動不審だな。
撮影会って、お前、写真部がなんかなの?」
「うー//」
まさか、女装の撮影会なんて言えないじゃない……
誤魔化さないと、と慌てて、
「シンガポールは遠すぎないか?
もっと近場で、ほら、
鎌倉とか葉山とか」
「?そんなとこ、毎日でもいけるだろ
教員は普段忙しいんだから、
纏まって取れる休みの時に
遠出しないと」
訥々と説得されてる間に、
杏果の撮影会は無事忘れられたようだ。
そして
結局、杏果の秘密を誤魔化した一方で、
俺はシンガポールへ行くことになった。そして、交渉術に長けた割井俊は見事杏果もメンバーに入れたのだった。
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