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第13話
a memory from summer no.6
職場編 その4
宿泊予定の宝ヶ池のホテルは
自然に囲まれた、昭和後期のある著名な建築家の設計。
ホテルの進入口から坂を下り、目の前に見える。
建物の外観も
穏やかなカーブが、
柔らかく訪れる客を迎える感じが、とても好きだと、教頭先生の感想を聞きながら、車は駐車場に止められた。
正にリゾートホテルだな
そんな感想は
ゆったりとしたホテルマンの動作にも現れているようで、
車から荷物を降ろしていると、和かな顔でドアマンが寄って来た。
「お持ちしましょう。
どちらからですか?」
「東京です」
一言返した俺に、
「そうですか、お疲れ様でした」
と更に笑顔を向けてくれる。
降ろしてあった2つのキャリーバックはドアマンが運び
ショルダーは各々が肩にかけて、エントランスへ。
エントランスから入ったロビーの右手フロントで、教頭先生がチェックインを済ます間、俺は真正面の庭園を眺めていた。
ドーム型のホテルなので、真ん中に回廊があり各階の回廊から庭園を見下ろせるんだな。
そこに教頭先生の少し大きめの声が誰かを呼んだ。
「おいおい、青木、迎えに来てたの?
早すぎない?」
声の方を見やると、1人の身なりの良い男性がロビーのソファーに腰掛けていた。どうやらその男性に先生は声をかけたらしい。
「よお、久しぶりだな、お疲れさん」
立って教頭先生に手を挙げた人は
よく見るとどこかで見たことのあるような、
誰だろ?
教頭先生が何やら伝えたらしく、こちらに振り向いた、
彼を真正面から見て、
あっ!
思い出した。
少し前に、新進気鋭の進学塾として鳴り物入りで世の中に登場した、
誠明会サピオの
塾長、経営者、創設者
青木真名彦氏だっけ。
えっ、この人か、教頭先生の知り合い?
確かに年頃は同じくらいだけど、
あまりの有名人の登場に、
俺が固まっていて近づいて来ないものだから、2人の方が連れ立って寄って来た。
「三枝先生、紹介するよ、
これ、青木真名彦
アオ、三枝先生だ」
「初めまして、青木です。
そうですか、あなたが……」
ふっと微笑んだその唇は
俺に凄いことを口ずさんで来た。
「あなたが、菅山の意中の人か、
ほおお、
なかなか、美人じゃないか、菅山」
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