15 / 207
第15話
a memory from summer no.8
恋人編 その4
荻窪の和也さんのところで試着を終えて、ちょうど8時半に駅に着いた。
駅前って、とキョロキョロしていると、後ろから肩をタンっと叩かれた。
振り返ると
背広の上着を肩にかけ、
ワイシャツ姿の上背のある男の人がすっと立っていた。
割井さんだった……うわーカッコいい、ブルーのワイシャツが、こんなに似合う人って、そう言えば割井さんのスーツスタイル、初めて見た。
ネクタイも色の濃いブルー、小さくドットが入ってる。
思わず口を半開きで眺めていたようで、すこし眉をしかめた顔も更に上々。
夏らしくスーツの色は落ち着いた薄いグレーで、周りの女の人たちもチラチラ見ているのがわかる。
モテそう……声に出てたみたいだ。
そうか?と、一転、笑いながら隣に並んだ割井さん。
「 腹減ったな、ちょうど最近よく行く店がこの先にあるんだ、そこでいい? 」
やっぱり強引な人、僕の応える間も無く歩き出す。
あれ?この道、いつか来たような?
この間通ったような、、と思っているうちに、
ここだと言われて
あっ!この間安藤君なんかと来た
パンケーキの店。
昔の蔵風の外観の二階建ての建物。
白い壁に下半分は海鼠の模様。
重そうな蔵戸は開いていて、中にもう1つ片引きの大きな硝子の框戸がある。
「 ここ、ここ 」
ともだちにシェアしよう!