16 / 207
第16話
a memory from summer no.9
恋人編 その5
「 ここ、ここ 」
タドタドと発した僕の言葉に
「 何?来たことある? 」
コクコクと頷く僕に、割井さんは 、
「 昼間はここカフェだろ?
夜はbarになるんだよ。
どっちに来たの? 」
「 パンケーキのモーニングに 」
「 朝からやってんのか~ 」
と言いながら、硝子戸を開けて入って行く。夜間接照明で、暗くしてある座席の奥から男の人が出て来た。
「 いらっしゃいませ、お二人ですか? 」
「 そう、2人 」
「 ああ、これは割井さん、今晩は 」
と低めの声で挨拶したのは、
髪の毛をオールバックに流した、
白いバーテンダーの上着を来た男の人。
グッと大人っぽくなった店内に、さざめくようなサックスの音が鳴っている。僕らが前に座った部屋のもっと奥にもう1つコーナーみたいなところがあって、そこでサックスを吹いている人がいた。
「 夜はLiveが入る日は、あの部屋開けるんだよ 」
と割井さんはよく知ってる風に教えてくれる。
夜は大人の来るところ、なんだな。
話をするからと、手前の部屋のカウンターに案内してもらった僕らは、早速飲み物と食べ物の注文をした。勿論、割井さんの主導で、本当にこの人は気が回せるというか、遠慮がないというか。ヒロシさんが振り回されるのがよくわかるような気がする。
オーダー終わったところで、
僕の方に眼差しを向けて、
「 さて、ヒロシは?
何か知ってる?なんで繋がんない……」
割井さんの目は、マジだ……
ともだちにシェアしよう!