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第19話

a memory from summer no.12 職場編 その7 ふっと、目が覚めた…… 小さく響く声が聞こえた、その声のせいか。 サラリとしたシーツ、重ねられた柔らかい枕。家とは違うマットレスの硬さに、あ、ホテルか、京都だったと、思いだした。 うすく灯のついたサイドテーブルを横向きに見ながら、徐々にその前の記憶を辿っていると、頭の下に冷たいものが敷かれているのに気がついた。 アイスノン?(商標名ごめんなさい) そうか、熱出したんだ。 控えめなガチャという、扉の開く音で、黒い大きな人影がそーっと部屋に入って来るのが見えた。 目を眇めて焦点を合わせると、 やはり教頭先生の身体だ。 「 目冷めたのか?どうだ?熱は? 」 当然俺に聞かれたのに、なんでか直ぐに答えるのが恥ずかしくて、しばらくぼーっと目を伏せていたら、 ベッドに近づいた教頭先生が、徐に手を俺の額に当て。 「 下がったようだな 」 と独りごちた。 まだ冷たいアイス枕に横顔を、埋めてなんと応えたら良いか迷ってると、 硬い腕に頭を抱えられ、上半身を持ち上げられ、教頭先生の胸の方に身体を抱かれるように寄せられた。 え?と焦った俺は、 「 な、何? 」 と全く失礼な一言を発してしまった。

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