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第22話
a memory from summer no.15
恋人編 その7
「 この間はごちそうさま。
パンケーキ美味しかったです 」
「また来ていただけたんですね 」
とにっこり微笑みかけられ、ぽわんとなってしまった僕に、
「 気をつけろよ……」
と割井さんが低い声で呟いたのが
聞こえたイケメンさんは、
軽く吹き出すように
「 ひどいな、割井さん 」
と言うと、今度は僕に向かって
「 あ、僕は青山と言います。青山ジュンヤ。
こちらでボーイ兼サックス吹いてます 」
「 サックス、じゃあ、さっき聞こえてたの? 」
「 ええ、聞いてくれました? 」
「 はい、素敵な曲でした、曲名はわからないけど 」
「 ケアレス・ウィスパーという曲です。
何かリクエストあれば次のステージで吹きますよ 」
と言ってくれたんだけど、曲はさっぱりあてもなく割井さんを見やると、
「 じゃ、有名なところで、杏果君も聞いたことくらいあるかもしれないね、
テイク・ファイブで 」
「 了解です。そう、きょうかさんて言うんですか?苗字?名前? 」
その親しげで、優しい物言いに、
「 名前です。三枝杏果と言います。
字は三つの枝と、あんずに果物のかです 」
と言わなくても良い名前の説明をした僕に、
「 あんずに果物か、可愛い名前ですね、あなたにぴったりだ 」
ええ?褒められたの?
と又赤くなった僕の横で割井さんが
もう一回
「 気をつけろよ 」
って言って苦笑いしてた。
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