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第26話

a memory from summer no.19 職場編 その12 居間で待っていると、程なくスーツに着替えた先生が出てきた。 「 ちょうどいい時間だな。朝飯行くか 」 「 はい 」 と言いながら、部屋を出る教頭先生に付いていく俺。 昨日より格段に口数の減った教頭先生に、かける言葉もない。 エレベーターで又一階に降りて、ラウンジで朝食を取った後、 部屋に戻り必要なものを抱えて、会議場へ向かった。 歩道を歩く間、 朝から蝉がワンワンと泣いて、流石森に囲まれたリゾートホテルだなと思っていると、 「 この先に宝ヶ池って公園があって絶好のランニングコースが、池の周りにあるんだ。 体調良かったら明日は行かないか? 朝はとにかく済んだ空気で気持ちが良いから 」 と教頭先生がやっとこさ重い口を開く。 「 俺、走る格好持ってきてません 」 「 ああ、歩くだけでも良いから、来た時に履いてたスニーカーで充分だよ 」 軽く頷き、会議場のドアを入っていくと、もう何十人かの人のかたまりができていた。 教頭先生と俺は講義内容が違うので、そのままそこで別れて講義の行われる部屋に向かった。 教頭先生なら昼はどうするかとか打ち合わせしそうだけど、何も言わなかったなと不思議に思いながら。 二階の100人ほど入りそうな中ホールで俺の講義は始まる。 朝の9時から昼休憩40分挟み夕方6時まで、約8時間のみっちりと詰まった内容。これからそれが3日間行われる。 現場の教師に民間の塾のスタディーを習得させるには、塾の子たちほどの密な勉強時間が必要なのかね。 厚いレジメの塊を見ながら思わすため息が出た。

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