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第30話

a memory from summer no.23 職場編 なその16 辰野君は気分害した事もなく、 「 初めまして、私、私立有澤学園で数学を教えております 辰野陽太と申します 」 「 そうですか、有澤学園 と言えば、とても優秀な名門進学校ですね 」 とんでもないと頭を軽く振った辰野君に、 「 私は三枝君と同僚で、都立高校で教頭しております菅山と言います 」 兎に角講義室から出ようと言って、荷物を持ち外に出る。 外では青木さんが教頭先生を待っていたようで、 「 菅山 先生、予約は7時にしたから、わりと急がないと 」 何か予定があるのかな?と眺めていると 青木さんは持っていた講習用のレジュメを俺の方に差し出して、 「 菅山 先生が考えてる事に役に立つ文科省主催の研究会を取りまとめている人がちょうど他の研究会でこっちにきてるから 」 と話す。 そのレジュメの目次を、ざっと見た俺は教頭先生が全く方向の違う講習を受けている事を知った。 青木さんは 「 滅多に会えない、大切な機会だ、逃す事ないぞ 」 と言いながら俺の方をチラッと見やる。 それに気がついた教頭先生は 「 三枝先生、昨日の今日で疲れただろう、何か美味いもんでも食べに行こう 」 と俺に話しかけてきた。 「 何が食べられそう? 和洋中、何が良い? 」 とまるで青木さんの言葉を聞いてない様子に驚いた俺は、 「 今晩は、辰野君たちと夕飯に行く約束したので 」 「 無理だろ、今日は軽い飯にした方がいい、滋養がいいし、体もあったまる鶏鍋にしとくか ちょっとここで待っててくれ 」 と言って教頭先生は青木さんを連れてホールを、出て行ってしまった。 その強引さにポカンとなった、人も疎らになったホールに残されたのは俺と辰野君。

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