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第41話
a memory from summer no.34
職場編 その27
カウンター割烹 焚合替
それぞれの小さな七輪に火がつけられる。
「 三枝君はイケる口?ぜんぜん表情が変わらないな 」
「 いえ、人並み程度です 」
「 人並みって人それぞれ違うと思うけど、菅山普段は三枝君どうなの? 」
「 人並みだよ 」
「 なんだよ、おまえまで 」
と豪快に笑う青木さん。
菅山先生に軽くいなされたのに、
このポジティブさはどこから来るんだろう?
前に置かれた丸鉢の蓋がカタカタなり出した。
七輪を慎重に前に進め蓋を取られて、暖かな湯気が上がっているのをみていると、
「 炊き合わせの替わりに、
今日は鱧すきを用意しました。
松茸、冬瓜、小芋、淡路島の玉ねぎを一緒にどうぞ 」
と、煮方の板前さんから説明がある。
「 鱧すきか……」
「松茸も出てるんだな 」
「 はい。松茸は出回り始めましたね。たれはこの汲み上げ湯葉で食べてみてください 」
「 湯葉?で 」
もったりとした白いたれは汲み上げ湯葉。湯葉ですき鍋を食べるとは、初めてのことに目の前の鱧すきの鍋と湯葉のたれで目が止まっていた。
「 三枝君、目が点になってるぞ 」
と笑われ右手に持っていた日本酒をひとくち飲んで息をついた。
「 暑い夏に、この熱いすき鍋を食らう。
なんとも幸せだ 」
今度ばかりは青木さんの言葉に大きく素直に頷いた。
淡路島の玉ねぎで、ほんの甘いすき鍋のだしから鱧をすくい、湯葉のたれにくぐらせる。
上品な甘さのだしの味を纏った鱧が湯葉のクリーミーな濃さで、なんとも言えない旨味が増している。
しつこいかと思われた湯葉のたれが、かえって鱧、松茸、繊細な味わいを持つ素材の良さを引き出している。
「 こんな贅沢して、いいのかな 」
とつぶやいた俺を先生がにっこり笑って、
「 うまいもの食うのに、いいも悪いもないよ 」
と鱧を食べた箸を置き、
日本酒を飲み干した。
つぎの酒を要求するオヤジ2人。
俺もそんな2人を見ながら、こんな歳の取り方も良いなと思ったことは、
絶対に伝えない。
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料理の画像はアトリエブログの最初の頃に入れてあります。
美しい盛り付けなので是非ご覧ください。
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