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第45話
a memory from summer no.39
職場編 その32 カウンター割烹
青木氏の過去 続
「 それで、まぁ今まで続いてるんだけど、菅山も最初から教師志望だったわけじゃない 」
「 え? 」
「 おいおい、三枝君に言ってないの? 」
「 そんな昔の話、したって……」
「 どういうことですか? 」
「 菅山は経済学部で、商社希望だった。就職先も◯橋商事だ、一流だろ? 」
軽く笑いながら菅山先生の肩を叩く。
俺はといえばなぜかそんなに驚くことがなかった。この人の普通の教師と違う感じはそこだったのかもしれない。
「 それで青木はもちろん建築家志望で、有名なアトリエ設計事務所に勤めたんだよな 」
「 務めたってより、ほとんど丁稚奉公だけどなぁ 」
と懐かしそうに話す。
「 それがどうして?塾の仕事を? 」
「 食えなかったから 」
大笑いしながらの青木さんのひとこと。
きっとそれだけじゃないはずだけど、
菅山先生の視線でこの話はここで終わらせた方がいいのだなと気づいた。
でも、菅山先生の方の前職の話は帰ってからじっくり聞き出してやろう。
先生の過去に対してもっと知りたい、そんな気持ちになったのが、何かの前触れなのか?
自分でも大いに戸惑うことだった。
次は又献立のお話
酢の物です。
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