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第48話
a memory from summer no.41
職場編 その34 カウンター割烹
ご飯
板前さんが炊き上がった釜の中でしゃもじを十字に切り、1辺ずつ底からすくって上下を入れ替える。
丁寧なのはご飯の上に鮎が乗っているからかな。お茶碗につぐのかと思っていたら、手にとって握り始めた。
前の蒸し物の器が下げられて、
小皿に漬物と味噌汁が置かれた。
お椀に注いである味噌汁の香りは香ばしい。
「 赤だしか、久しぶりだな 」
先生が言うと、
「 そうだな家ではなかなか赤だし出てこない 」
と青木さん。
「 一人暮らしの俺のうちでは、赤だしが出てくる日は、ないな 」
と先生が笑いながら話す。
そうかあの広いうちに一人暮らしなんだ
「 三枝君の家は誰か味噌汁作ってくれるのか? 」
と青木さんに聞かれたので、
「 娘がたまに作りますが、でも洋食が多いかな?赤だしは味噌を買ったこともないだろうな 」
と言うとおどけたように、
「 じゃあ和風の飯を食わせれば、胃袋捕まれてイチコロかもしれないな 」
などと又からかうような口調。
本当に口数の減らない人だ
突っ込まれるだけなので相手にしないよう水を飲んでいると、
目の前に2つのすこしお焦げが残る香ばしい香りのするおにぎりが長皿に乗せられ出てきた。
「 鮎と生姜佃煮のご飯をおにぎりにしました 」
「 手で食べていいですか? 」
と聞くと、
「 もちろんですどうぞ 」
とかえってきたので、
遠慮なく手に持ってかぶりついた。
噛んだ瞬間口の中に鮎の旨味と御釜で生姜の佃煮と一緒に炊き込んだ醤油が香るご飯のあまさが溢れてきた。
「 おにぎりっていうのがいいな、子どもにかえるみたいだ 」
「 味がぎゅっと詰まってる感じかするな 」
とっくの昔に完全に大人になっている2人も気に入った様子。
「 おにぎりとは意外でした 」
と板前さんに伝えると、
「 おにぎりにすると、ご飯をほおばるという感じがして、こういうのも良いかなと思いまして 」
確かに、なんとなく涼みにでた河原で座っておにぎりを食べる姿を想像してしまった。
それを隣りに座る先生に伝えると、
青木さんが
「 数学の教師なのに、ロマンがあるんだな~ 」
とまた失礼なことを……
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料理の画像はアトリエブログの最初の頃に入れてあります。
美しい盛り付けなので是非ご覧ください。
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