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第49話
a memory from summer no.42
職場編 その35 カウンター割烹
デザート 水物-みずもの
すっかり満腹になり、お茶を貰って、横を見ると。
先生はまだ、お酒のお代わりを頼んでいる。
「 おい、まだ飲めるのか? 」
と聞く青木さんに
「 寝酒の代わり 」
「 寝酒って、まだ10時前だぞ。
ホテル帰ったらもう寝るつもりか? 」
と笑われる。
「 まぁちょっとその辺をブラブラしたら、帰る頃にはいいあんばいの時間だろ 」
と言う先生に俺は何かもやっとしたものがこみ上げてきた。
「 ひょっとして、また、夜中過ぎに帰って来て、ソファで寝るつもりですか? 」
「 え?菅山ベットで寝てないの? 」
「 はい、一泊も……夜中過ぎに帰って来て、朝もランニングに行くのでまったく会いません。多分ソファで寝てるんだと……朝、散らかったソファを見て僕と一緒にいるのが嫌なんだろうなと思ってますよ 」
黙っている先生に、ヤケになって青木さんにそこまでばらした。
「 嫌っていうか…… 」
青木さんがその先を濁したところで、
「 デザートの水物、
白玉クリームあんみつに生姜シロップをかけてあります 」
3人は思わず無言になって、あんみつを見つめる。
最後の水物は季節の果物が賑やかに使われて、爽やかに生姜の風味が効いた上品な一品だった。
直前のもやっとした気分も薄らいだ。
素晴らしい料理にお店の人たちに礼を言い、ご馳走になった青木さんに礼を言い、その間、菅山先生は最後まで俺の方を見ないようにしているのをうっすらと感じる。
店からの露地を出ると外にはタクシーが二台呼ばれていた。
店長さんが外まで見送りに出ている。
再度挨拶をして、
青木さんは前のタクシーに、俺たちは後ろに乗ろうとした時に。
「 俺はしばらくブラブラするから、三枝君が乗って 」
「 何言ってんですか!いいから帰りましょう 」
と強引に菅山先生をタクシーの中に引っ張り込んだ。
俺よりずっと体格のよい菅山先生だけど、俺だって男だ、このくらいは力づくでなんとかできる。
前を見ると、青木さんがタクシーの中で後ろを振り返り大笑いしていた。
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