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第52話

a memory from summer no.45 職場編 その38 おろしていた腕を上げ抱き返そうとした時に、 俺を抱えたまま、先生は横のソファにドスンと腰をおろした。 「 やっぱり、飲みすぎたかな 」 はーこのオヤジめ、 「 あれだけ、飲めばね 」 俺は先生の胸に頭を預けたまま ため息をひとつはいた。 「 どうします?この先 」 「 そうだな…… しばらくこうしていたいかな 」 「 好きにしてください 」 何をしてんだこの人は、おかしくなった俺はソファの上で抱かれたまま暫くクスクス笑いが止まら止まらなかった。俺を黙ったまま抱きしめる。 胸の動悸が静まり、お互いの息が重なってる。 この人の肌の温もりが伝わるシャツの匂い、わずかにヘアワックスが芳る髪、夜になって少し伸びかけた髭の男らしい肌ざわり…何もかもかもが落ち着くし、愛おしいと思う。 これは感情なんだろうか? それとも感覚? まいったな…… 「 先生、明日は走りましょうか 」 「 ああ、そうしよう 」 俺はこの人にどんどん心がひらいていくのが気もちいいと思った。 隣にいて、ベッドにも入ってこれないほど、臆病になる。意識しすぎて、離れずにいられないほど好きになるんだな、この人は。 忘れてたよ、そんな気持ちを持つことを。 若くない俺たちは、情熱だけで、高鳴る気もちだけでは突っ走れない。 奥深くつのらせて、気がついた時には戻れないほど思いを重ねてるしまうんだよな。 俺と先生はもちろん別々に風呂に入り、今度は一緒の寝室で並んだベッドに潜り込んだ。 お互い上を向いて変哲もないホテルの天井を眺めながら、 この何日かのつらつらとした思いを話しながら、やがて会話も途切れがちになって穏やかに眠りについた。

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