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第55話

a memory from summer no.48 恋人編 その9 (職場編 その41) 「 いや割井さんはラウンジで待ってられる方が良いですよ。 ルームサービスのコーヒーはあまり美味しくない。ラウンジの方が良い豆を使ってますからずっと美味いから 」 教頭先生が少し強い調子で俊に話すと 俺の方をチラリと見た俊は意外にあっさり、 「 そうですか、ではそうします 」 ホールの先にあるラウンジに足を向けた。 急いで部屋に帰り、教頭先生に先にシャワーを浴びてと譲られ、 礼を言って先に浴びさせてもらう。 なんで俊が来たのか、俺には分からなかった。慌ただしくシャワーを浴びて出て来ると。 「 荷物作らないと、待ってるんだろ 」 と先生に告げられ、初めて気づいた。 俺を迎えに来た? 「 え? 」 と驚いた俺の肩をポンポンと叩き、 「 先にラウンジに行ってて 」 と交代でバスルームに入った先生。 俺はいたたまれずに乱暴に荷物をキャリーバッグにつっこみ帰り支度を済ませて、シャワーから出て来る先生を待った。 タオルを頭から被り出てきた先生は俺を見ると一瞬目を見張った。 「 待ってなくても 」 「 一緒に朝飯食いに行くんですよね、 さっき何か言いかけたじゃないですか、あの、続きはなんなんです? 」 「 ああ、もう、アレはいいんだ 」 「 なんですか?アレって 」 「 アレはアレだよ。もう忘れた…… 」 教頭先生が俺には開いていた扉が閉まっていくような気がして、ラウンジで俊が待ってことよりもよほどその方が気がかりだけど、先生の方はブルーの濃淡のストライプのクルーネックシャツとベージュのコットンパンツに着替えた俺をまぶしそうに見ながら 「 先に行って和定食頼んどいてくれよ 」 と寝室に入ってしまった。 二度も言われたらさすがに下に行くしかない。そう言えば、本当に迎えに来たのか?とか、連絡もしないで!とか言うことはいっぱいあったな、と思いつつパンツのポケットのスマフォを、探るとたいへんな事を思い出した。 この出張講習会の期間中、仕事用のスマフォしか見てないじゃないの?俺。 どこにいった⁇個人用のスマフォは? まずい、まずい、まずい!

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