a memory from summer no.58 4人で その2 「 僕に聞かれても困りますよ。運転されてる人にたずねたらどうですか？ 」 さらりと冷たく返されるが青木さんは気にならないようだ。 ニヤニヤしながら教頭先生に 「 おい良かったな、主導権はお前にあるらしいぞ。どうする？ 」 「 俺はどっちでも。お前は寄りたいところでもあるのか？ 」 優しいな先生は青木さんの欲しがる返事をかえしている。 そして僕にも 「 三枝先生は予定は？大丈夫なの？このまま走らせれば、東京に夕方前には帰れるけど 」 どう応えたらいいかな……先生の意向はどうなんだろう？早く帰りたいなんて言うとこの状況を面倒だと思ってるって伝えることになるし。 「 俺は、どっちでも。教頭先生の疲れない方で良いです 」 「 ほ〜〜割と健気なんだな、 菅山もたまらんな 」 前の座席で、そのセリフを聞いただろう俊の肩が大きく動く。 「 それじゃ、東名阪から名古屋の環状に入って 」 「 名古屋に入る？どこへ行くんだ？ 」 「 割井君、悪いけどスマホのナビで明治村って出してくれる？ 」 「 明治村ですか？車のナビじゃだめなんですか？ 」 「 こいつ、ナビ使わないんだよ 」 「 は？ナビを使わない？どうして？ 」 「 命令されてるみたいで嫌なんだってさ！だからさスマホで出したら、大体の道順教えてやって 」 「 明治村って？ 」 と聞いた俺に、 「 明治時代の建物を移築して公開してる。なかなかしっかり集められてるから見応えあるぞ、行ったことはないの？ 」 とバックミラーで俺の顔が見えているのか、柔らかい声で教頭先生の説明がはいる。 「 ええ、名前は聞いたことがありました 」 バックミラー越しに先生はにっこりすると、少しアクセルを深く踏んで、スピードを上げた。 「 少し急ぐか、昼飯に間に合うように 」 教頭先生も行く先に乗り気な声に俺はほっと安堵した。