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第67話

a memory from summer no.60 4人で その4 「 この丘をくだってその向こうに見えるのが、帝国ホテルの中央玄関を移設した建物だよ 」 「 大建築家 ライトの設計だったな 」 「 そうそう実に フランク・ロイド・ライト らしい堂々としたファザードだよな 」 丘をくだり池のある庭園を横切って、建物に近づいていく。 正面から見ると、その威風堂々とした外観に圧倒される。 俊も黙ったまま見いっている。 「 あの時代、この建物を見た人たち、新しい世界がやってきたって思ったんでしょうか」 「 割井くん、全くの同感だよ。今でも重層な華麗さがわかるこの建物を、振り返る間も無く新しいものが押し寄せてくるのを、当時従順に受け入れた人たちがどんな気持ちで見たのかと思うと、 建物の影響ってのはある意味、恐ろしさも感じるよ 」 「 人を作るのは教育だけじゃないって、思うな。見たもの聞いたもの、感じたもの、全てが先生になるんだよな 」 と教頭先生が語ると、 「 ああ、お前がシンガポールで感じたものもその類だろうな 」 その青木さんと先生の会話をそばでじっと聞いている俊。 何か目が覚めたような顔をしてる。 「 俊、中に入ってみよう 」 と俺は何かを感じた俊を誘い玄関の中に入った。 車寄せからエントランスに入ると その落ち着いた暗さでお客を迎える。 「 現代はなんでも明るくしすぎですね 」 「 そうだな、この暗さが柔らかく人を迎えてる気がするよ 」 「 暗くすることで柔らかさが出るのは、物の陰、陰影の輪郭が曖昧になるからだろうな、 建築家はそれに対するように内装と家具はしっかりとアウトラインを持たせたんだと俺は思う 」 いつの間にか後ろには青木さんがいて、至極真面目に俺たちの会話を補足した。

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