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第71話

a memory from summer no.64 4人で その8 コーヒーが運ばれてくる。 ボーイがソーサにのったカップを静かに各々の前に置いていく。 コーヒーの香りがたち、 いっとき沈黙が漂ったけど、俊が話を続けた。 「 青山さんと知り合いですか? 」 「 いや、知り合いというか、大人になってまだ会ったことはないというか、最近はないな 」 「 はぁ?それって、どんな間柄ですか? 」 俺はそれ以上は話にくそうな教頭先生の口調に気がついて 「 俊、この話し、ここまでで 」 と言いかけた。 「 割井君、その店の名前を教えてくれないか? サックスって、ライブやってる店なんだろ?」 と、青木さんが問いかける。 「 ええ、荻窪にある、ダイニングバーで、 バックドアっていう店です 」 「 ふうん、バックドア、ね、ありがとう 」 そう言うなりコーヒーを飲みほして、 「 さあ、そろそろ帰るか 」 と席を立った。 その時視線で何やら 青木さんが教頭先生と話をしたそうなのを感じた俺は、会計後、俊をトイレに誘った。 「 おい、ちょっと 」 と俊を連れ出してトイレがありそうな方に向かうと 「 トイレですか? 」 と素直に付いてくる。その時俺は急に雰囲気の変わった青木さんと先生のことしか頭になかった。 ぼんやりとなぜだろうと思い巡らしてる俺は男子トイレのドアを開けて中に入る。 その時、トイレの中に誰もいないのを確認した俊は、後ろから急に俺を抱きしめた。 「 な、なに! 」 「 言ったでしょ、おれはあんたに朝からキスもしてないって 」 振り向かされて顎に長く手入れの行き届いた人差し指をかけたら有無を言わさず、覆いかぶさってきた。 「 俊、まって 」 「 待たない 」 唇を軽く合わせて、そのまま薄くて柔らかい感触を楽しむようにしていたら、 息つぎの間にすっと舌を食まれた。 深く合わせた口腔の中をねっとりと舌で舐めあげられたと思ったら、すっと引かれて唇を甘噛みされる。 背中にあてられた手が熱くなってきた頃、うなじをなでられ、 「 このくらいにしないとバレますね 」 と押し付けらていた腰も引いてしまう。お互い半分勃ってきたような膨らみに、 「 バカ 」 と俺は俊を小突いた。

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