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第74話
a memory from summer no.67
心の底 その1
歩きだしたのはいいが、どこに行くとも決めてなかった。
「 どうします?夕飯にはまだ少し早いかな 」
「 そうだな、俺は家にかえ……」
「 帰しませんよ、
俺はあんたと"する"ことがある 」
「 え、駅前のこんなところでする話じゃないだろ 」
俺に向かい合って立った俊の強い眼差しに、思わず視線をうつむかせて小声で伝えると
「 ……少し付き合ってもらいます 」
と有無を言わせず、教頭先生の車のトランクから下ろした時のまま、俺のキャリーバッグを持って駅に入って行く。
どこに?と尋ねる間もなく、icカードを取り出して改札を抜けて行く俊に仕方なしについて行く…
改札を入ってからも後ろの俺の方を見ることもなしにホームへの階段を登る靴が、いつもより強く踏みしめている気がした。
やっぱり怒ってるんだな、とその後ろ姿を見てため息がでた。
ホームに上がり折りよく来た電車で4分ほどの短い時間の車内。
沈黙が気づまりで
「 青木さん、荻窪で降りなくて良かったかな、どっかに行く気じゃなかったのかな 」
「 気づいてなかったんですか?あの店に行こうと思ったんでしょ 」
「あの店? 」
「 うわーあんた人の話聞いてました? 」
と、すっかり呆れたように言われたので、悔しくなった。
「聞いてたよ!あのバックドアって店のことだろ 」
軽く俊が笑ったので
機嫌が少し直ったかとホッとした。
「 思わずって感じで言ってましたね。
行きたかったんでしょうね。
菅山先生は都内に入ってからはそれどころじゃなかったようですが」
「 それどころじゃないって?」
横目で睨まれてため息をつかれ、俊からそれ以上の応えはなかった。
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