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第84話

打ち上げ騒動 その1 ( 歳上の彼は多情なオトコ ) 研修から帰ってきて、 夏休み講習が始まる初日の職員室。 二日ぶりに菅山先生と顔を合わすと、 「 研修会はお疲れ様。疲れはでなかった? 」 「 はい、ありがとうございました。 帰りはみんなで同乗してしまって、 先生こそ疲れたんじゃないですか? 」 「 うん、私は運転わりと好きだしな、かえって楽しかったよ。 それで、 後でちょっと……」 『 三枝先生~ 』 職員室を訪ねてきた生徒に呼ばれる。 「 いや、後で講習が終わったら、また 」 と菅山先生は自分の机の方に戻っていった。 今日の講習は、午前中が3年の受験のための補講、午後は1年と2年の追試を兼ねた授業が午後にある。 本当は俺は3年だけの受験補講と2年の補講だけで良いのだが、 7月頭に1人新任教師か急に体調不良で辞職したために俺の補講に回された。 菅山先生が俺の負担になると心配して臨時教師を探していたけど、結局間に合わず。 正直、退職した先生は担当した1年の授業が上手く進められずに精神的に体調不良を引き起こしたのだから、1年の授業は相当遅れている。 試験問題も妥当なレベルでは作れなかったのに、更に赤点を取った子が多く他塾で勉強してる子たちとは大きな差が一年でできてしまう。 頭が痛い問題を抱えてため息が出る。 そう考えると、京都の研修で会ったあの青年教師たちは随分骨太だったんだなと、教育論議したのが楽しく懐かしく感じる。 そういえば、東京で会おうと約束してたっけ。辰野君、連絡取ってみるかな…… 若い教師のことも理解しなくちゃなんないしと、連絡する理由を取ってつけたように思いついた自分に苦笑した。 烏丸御池の駅改札を抜ける俺を後ろから見つめていた辰野君になんか胸がうずいたのを思い出すと、少し後ろめたい。 菅山先生と、もちろん俊にも内緒にして。 その楽しい予定に重荷の講習も何かしら話題にすれば良いのかと楽しい気分になってきた。

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