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第88話

打ち上げ騒動 その5 ( 歳上の彼は多情なオトコ ) え! 「 そんな驚いた顔して 」 響ちゃんはお箸を好物のキムチにのばしながら続ける。 「 彼氏でしょ?割井さん。 ヒロシさん、もともと綺麗だけど最近本当にお肌ツヤツヤだし、ますます色気が出てきてるもの 」 「 よ、よんじゅう男に色気なんて 」 「 あるある、若い子にはない艶ってもんがあるのよ。40位ってちょうど人生の折り返し地点? 精力的、体力的、知的レベルのバランスをとった頂点はその頃でしょ。 言わば最期の頂点を輝かせるのに恋愛感情も必要だし、そのことで艶も増すのよ。気づいてる人には堪んないと思うわ 」 「 きょ、響ちゃん…… 」 男同士、年齢、そんなものを軽く飛び越えて肯定してくれたわけ?けど、それでいいのか? 「 このキムチ美味しい〜〜 杏果が買ってきたんだったかしら、 また買ってくるように言っとこ 」 ふと気になった事を聞いてみる。 「 その、折り返しを超えたら落ち目って事? 」 「 それは、、人それぞれじゃない? 確かに二十代三十代より、身体は衰えてくると思う。でも、補えるものがあれば落ちることはないと思うな 」 「 補えるもの? 」 「 知性とか情熱 。 先が見えてくることによる良い意味での開き直り、覚悟かな~ ゾクっとするよね、覚悟した人って。本当の大人になっていく?大人の階段は登り続けなくちゃ、て誰か言ってたけど……落ちる、下がるってそれが足りないとなっちゃうんじゃないかな。 でも、登り続けてる、なかなか、いないけどね、そんな大人」 ふっと、菅山先生と青木さんが脳裏に浮かんだ。 「 いるかもな…… 」 呟いた俺の言葉はしっかりと聞こえたらしく 「 え?いるの?ヒロシさん知ってるの? じゃ、紹介してよ〜っ 」 「 なんだ、響ちゃんはかなり歳上が好みなの? 」 と軽く混ぜっ返すと、 箸を止めて、みょうな間があった。 「 うん、まぁそんなとこかな 」 なんだろう?なんか違和感がある。 その時玄関から元気の良い声が聞こえてきた。 「 行ってきま〜す。 夕飯いらないから~ 」 「 あらあら。元気よくおデートに出発ね 」

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