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第90話
打ち上げ騒動 その7
( 歳上の彼は多情なオトコ )
俊から教わった経路を確かめる。荻窪にある、ダイニングバーで、バックドアという店。
駅前の商店街を通り抜けてまもなく、
昔の蔵風の外観の二階建ての建物。
白い壁に下半分は海鼠の模様。
重そうな蔵戸は開いていて、中にもう1つ片引きの大きな硝子の框戸がある。
あ、ここだ
バックドアと控えめに壁に書かれた文字を確認して、框戸を開けると、
「 いらっしゃいませ 」
と静かな声がかかる。店の奥から出てきた人に
「 あ 先生 」
と言われて、真正面から顔を眺めると
なんだ渋谷君じゃないか、
「 何、?バイトしてるの? 」
「 はい、先生は?待ち合わせですか? 」
「 そう、それと先生はやめて 」
と苦笑すると、渋谷君はしまったという顔しながら、
「 すみません、そうですよね。
三枝様、それでお待ち合わせですか? 」
と急に口調が大人びたものだから、思わず笑ってしまった。
「 そう待ち合わせ、確か割井で予約してあると思うけど 」
もう1人奥から男の人が出てくる。
「 割井様ですね、いつもありがとうございます。席は用意してあります。どうぞこちらへ 」
尋ねるとオレが最初のようなので
「 あ、じゃぁ、ここで待っています。
すぐ来ると思うから 」
「 わかりました。渋谷君こちらの椅子へご案内して 」
渋谷君に案内され、受付のカウンターの奥のこじんまりとした待合に案内される。落ち着いた色合いのシックな雰囲気で、
「 いい雰囲気だね 」
「 ありがとうございます 」
と小さく会釈する渋谷君の大人びた様子に小さく噴きだす。渋谷君が情けなさそうな顔をするのを見て、隣の年かさの男の人も微笑んだ。
「 お知り合いですか? 」
渋谷君は俺と顔を見合わせて俺が頷くのを確認し、
「 僕の高校の時の先生です 」
「 そうですか、私はこの店を任されている神崎と言います。彼はとても有能で助かってます 」
俺は少し面食らったけど、教え子が褒められるのは嬉しいので、
「 ありがとうございます 」
と答えた。
ガラッと戸を引く音がして
いらっしゃいませという声と共に入ってきたのは青木さんだった。
「 よお、待たせた?菅山少し遅れるって 」
2人になったので席に案内してもらった。
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