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第94話
打ち上げ騒動 その11
( 歳上の彼は多情なオトコ )
サックスの奏でる音は、すっと聴いてる人を違う世界に連れて行く。
jazzに疎い俺でもこの曲は知っている。
" チュニジアの夜"若い時に黒人の女性ヴォーカリストがアルバムに入れていて知った曲だった。哀愁のある歌いあげるようだった曲が、楽器の躍動する音階の世界に置き換えられて、周りがなくなり、自分独りその世界に浸っていく気がした。
やがて、拍手や歓声の中、
サックスを吹いていた彼の生の声が聞こえてきた。
「 今夜はありがとうございます 」
とその声を聞いた途端、
あっ、と、驚きの声を上げた俺
俊が薄暗い中俺を見つめて
わかりましたか?
と言う顔をしてる。
菅山先生は
ため息をひとつ付いて
今夜のメンバーを一人一人紹介する彼を見ている…
最後に自分の名を告げる彼。
「 テナーサックスは青山ジュンヤです 」
その声と共にまた拍手と指笛が吹かれる。
彼は少し頭を下げるように観客に答える。
「 青木……そっくりだな、
お前の声に 」
青木さんは黙ったまま、じっとステージを見つめている。
次の曲名を言いながら演奏がまた始まった。
「 This I Dig Of You 」
規則正しい和音を踏むピアノから始まり、サックスのメロディーは優しく軽快に響く。
君のことが好きだよ!というそのままの明るい曲。
演奏もこれからのせるんだという感じが伝わってくる。
楽しそうに脚とサックスでリズムを刻みながら演奏する彼を見ながら、
誰かにその横顔も似ている……
まゆを少し潜めながら演奏する横顔。
あ、青木さんの眉をひそめて笑う顔に!
ということは、親戚?え?
息子?なの?
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