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第95話

打ち上げ騒動 その12 ( 歳上の彼は多情なオトコ ) 軽快にサックスの旋律が余韻を残して終わった。 拍手に楽しそうな笑い声が混じる。 菅山先生はひときわ熱心に拍手を送っている。 うん、良い曲だった ウイスキーのソーダ割りを口に含むと、チーズの盛り合わせを選びながら、そっと青木さんの方を伺って見る。 青木さんは、ロックグラスを持ったまま、ステージの方を見つめている。 ちょうど俺たちの席からだと、少し斜めに見下ろすようになるので、結構遠慮なく演奏者の姿を見ることができる。 三曲目が始まりそうになったので、慌てて小声で 「 あの、青山さんて、青木さんの息子さん? 」 と俊に聞くと 「 わかりません。まぁあれだけ似てるんだから何かは、あるんでしょうね 」 落ち着いたドラムから始まり、 このステージから加わったギターとサックス、トランペットのユニゾンがうたいあげるような、心地よいスローテンポの曲。 「 sugar か 」と言いながら青木さんが俺たちの方を見て、 「 あのテナー吹いてるのは、息子…… だと思う…多分俺の息子 」 菅山先生が呆れたように、 「 ジュンヤ君だろ、お前の息子だろ 」 と返した。 「 らしいな 」 菅山先生から目線をそらし、らしくなく呟くとまた黙ってステージを、見つめている。 青木さんのグラスのロックの氷は水割りのように溶けてるのが見えた。 サックスを吹く大天使、ガブリエル、力強く…美しい。 そんな形容したいほど彼の演奏する風景は。とらわれる。 「 あぶねえな 」 耳元で俊の声がした。

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