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第96話

いよいよ、できたデモ映像を持っていざ行かん その1 おなかを壊してまで撮ったデモ用の映像は小野さんが急いで編集するらしく、その場で僕には見せてもくれなかった。 「 一回くらいは嶺さんていう人に見せる前には僕にも見せてよ 」 「 うーん、そんな時間あるかな〜 あ、小野ちゃん明日の夜なら良いって 」 さっさと嶺さんに連絡取ったらしい流星はそう答える。 「 うわー明日の夜?俺、徹夜じゃないか 」 渋い顔をした小野さんだけど、この人仕事は速い。だから姉貴が一緒にやってる。 「 杏果も、いいな。明日の夜、7時に広尾の、駅な 」 「 え?そんな急に、勝手な」 「 って、早い方が良いだろう?泉、捕まえたいんだろ?嶺さん忙しい人だから、明日時間が取れるって幸運だから。それに少し聞き出したら泉も用事があって夜来るらしいから 」 「 わかった、泉君が来るなら、僕は覚悟を決める 」 小野さんがまた大笑いしてる。 「 なんか悲愴だな〜〜 」 「 だって、はだかの!それも、エッチな映像を殆ど知らない人に見せるんだから! 」 そう力説してから、僕はふっと考えた。 なんでこんなことまでしなきゃなんなかったのかな?普通に泉君に連絡とりたいって言っても良かったんじゃない?一緒に撮影会まで出てたんだから? じとっと流星を見ると、 流星は知らん顔をして、 「小野ちゃん帰ろう、腹減った〜〜 俺も編集手伝うからさ、 杏果、明日な! 」 なんて言いながら、慌ただしく小野さんを連れて帰っていった。 怪しい、流星。 なんか、後ろめたそうな…… あっ、あの2人、掃除もしないで帰っちゃったじゃない〜〜 姉貴の部屋とお風呂と、綺麗にしとかなきゃ姉貴にしばかれる。 僕はこの疑いはさて置いといて、早速掃除に取りかかった。 それにあの預かりものもしっかり渡せるように用意しておかなくては。 きっと、あれが泉君にとって大切なものになるかもしれない。 よし!頑張ろう。 気合いを入れ直した僕だった。

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