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第97話
打ち上げ騒動 その13
( 歳上の彼は多情なオトコ )
ライブも5曲目が始まるかな?ステージの演奏もたけなわ。
「 この後、最期にリクエストで一曲考えてます。
どなたか、演奏したいという方は?
サックスじゃなくても、ほかのピアノ、ドラム、声に自信のある方ならヴォーカルでもいい」
すっかり演奏でのって和んだ観客から、拍手と大きな笑い声が起きる。
その時、すくっと菅山先生が立ち上がった。
青山さんは嬉しそうに微笑みながら
「 ありがとうございます!
そちらの男性は?何を?
もちろん曲も決めてくださって結構です 」
暖かい冷やかしと重なる拍手の中
菅山先生は
「 ドラムで、曲は 」
「 あっと、内緒で僕だけに教えてください。皆さんを驚かせたいから 」
茶目っ気のあるその返事に笑い声が拡がり、菅山先生の方に彼が近づいた。
暗いので立っている菅山先生のそばまできた青山さんに先生が耳打ちしてる。
それをそばで見ている青木さんの視線に気がついた青山さんは、わずかに眼を見開いて、そして眉を顰め、青木さんを睨みつけているように俺には見えた。
青山さんは菅山先生に眼を移すと、
「 お名前は? 」
「 菅山です 」
「 菅山さん、それでは最後の曲の時によろしくお願いします! 」
ステージに戻り変わりのない笑顔を向けてメンバーに頷くと、演奏が深いベースのリズムから始まった。
「 カリベ (Caribe) 」
と一言よく通る声で観客に伝えると、すぐプラス、サックスとピアノのユニゾンになった。
背筋は真っ直ぐなのに、首は柔らかくしなやかに動く、漆黒の髪が、時にはねるように、時に流れるように、ライトに照らされる。
サックスを持つ指は長めで滑らかな象牙色。
そのキーを押す指の運びから目が離せない。
テーブルの上で遊ばせていた手の上にそっと隣から一回り広く暖かい手が乗せられて、指が絡められる。
暗いからいっそう、隣にいる俊の少し怒ったような息遣いが手のひらから伝わってくる。
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