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第101話

打ち上げ騒動 その17 ( 歳上の彼は多情なオトコ ) 少し放心したようにテーブルに頬杖をついてステージを眺めていた青木さんが、ふいに立ち上がった。 背広を脱いでいるので肩から腕、そして張った胸とすっと伸びた背筋。 上質な薄いブルーのワイシャツ越しにもその年齢ならではの優雅さがわかる。 この体格、羨ましいな。 今夜は菅山先生にも過ごしてきた年齢の厚みを感じさせられたし、と思いながら青木さんの視線の先を見やると、そこには菅山先生と話しながら近づいて来るジュンヤさんの姿があった。 周りのテーブルから称賛の声をかけられながら2人がテーブルまで来ると、俊と俺も立ちあがり拍手して2人を迎えた。 「 どうだった? 」 「 すごいですよ、いつ練習してんですか?ジュンヤ君もすごく良かった 」 と俊が話を繋ぐと、 「 菅山先生はロックのドラムだけじゃなかったんですね 」 と俺も話に加わる。 「 まぁ、ドラムの基本はジャズだったからな 」 「 菅山さんはロックバンドで叩いているんですか?これからはこっちでもやりませんか? 」 と4人の会話は弾んでジュンヤさんもそのまま椅子に腰かけた。 すかさず俊が飲み物をオーダーする。 「 今夜に 乾杯しましょう 」 「 おおいいね 」 「 ジュンヤさんなにがいい? 」 「 ……僕が決めても? 」 「 もちろん 」 「 マルガリータ、マルガリータで 」 ジュンヤさんは青木さんの方を真っ直ぐ見つめてそう言った。 その時青木さんが肩が強く強張った。 その事に頓着しないように菅山先生が まるで天気の話をするように、 「 ジュンヤ君は俺のこと覚えてる? 」 「 えっと、お会いしてたんですか? 」 「 うん、大昔ね、まだジュンヤ君中学生だったかな?おい青木確かそうだったよな 」 なんとなく、青木さんの顔が強張ってる。 「 そうですか、いつ頃だろ 」 「 中3の夏休みだったかな 」 「 ああ、あの時の……空港で 」

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