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第104話
打ち上げ騒動 その20
( 歳上の彼は多情なオトコ )
「 あれで、良かったのか? 」
「 お前がセッションしてくれたおかげで話をすることはできた。感謝してる」
「 14年ぶりか?」
「 いや、あいつが18の時に1回向こうで会ってる」
「 10年ぶりか 」
「 ああ、話をするのには長すぎたよ、お互い避けていた時間が な 」
それを聞いていた俊がおもむろに話しだした。
「 俺の父親はもう15年ほど前に他界しました。父親は殆ど仕事で外国にいたし、他所に女性がいて母親を泣かしたり性格も合わなくて散々避けていましたけど、やっぱり何を考えてたか知りたかったし、聞いてみたいこともあったと今頃になって思ってますよ……
青木さんもジュンヤ君と何かわだかまりがあるのかもしれないけど、死んだら話しはできない 」
「 死んだら話はできない、か、
その通りだな 」
少し静かになったバーの様子でだいぶ時間が経ったことを知った菅山先生の
「 今日はこれで解散といくか 」
という言葉で、一応打ち上げという名の会はお開きになった。俊がじゃぁ会計してきますとフロントに向った間、今夜の演奏を褒める言葉を菅山先生に伝えると、
「 そっか、良かったか? 」
と嬉しそうに微笑んでくれた。
そして
「 今度は2人でこような 」
と俺の肩を引き寄せながら耳元で囁いた。
「 おいおい、俺もいるのを忘れるなよ 」
と青木さんにからかわれると、
「 鬼の居ぬ間にくどいとかないと、すぐ邪魔が入るからな 」
と返す先生に呆れながらも、こそばゆい気持ちがこみ上げる。
少しポットなった俺の頰をみとめて、
「 隙だらけだな 」
と青木さんが呟くと
「 親子共々ですよ 」
いつの間にか俺の腕を掴んで先生から引き離した俊が余計な一言を付け足した。
高笑いする青木さん、苦笑いする菅山先生に、ここで終わりとばかりに俺を促して外に出る俊。
店の外に出ると都会の夜空に見事なフルムーン。
「 Fly Me To The Moon、私を月まで連れて行って、か 」
ジャズの余韻に惹かれながら、少しの間、夜空を見上げ、それぞれの心の中に想いを馳せた。
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