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第107話
シンガポール ハイ
その3
「 以外ですね、割井さんがエコノミーを 」
「 まぁ、いろいろあるんだよ……
若者にビジネスは贅沢だから、エコノミーで充分って豪語する人が、いてね 」
俺が言った条件。杏果を連れて行くならまだ学生なんだからせめて飛行機では贅沢させないで、を俊には守らせたが。
搭乗案内が始まり、ボーディングチケットを持って飛行機に入る。
「 1番後ろ? 」
「 そう2人席でまだ少しは余裕があるから 」
そうか俊と朝霞さんは体格いいからエコノミーきついんだな、と思っていたら顔に出ていたのか、
「 僕らも出張はエコノミーですから 」
「 俺はビジネスに変えるけどな 」
「 割井さんとは羽振りが違います 」
と朝霞さんが笑いながらそう話す。
尾翼の方1番奥までたどり着くと、
左右に確かに2席ずつ。
でも俊と俺?杏果と朝霞さんなの?
エ?と思って俊に問いただそうとすると
「 そりゃそうでしょ、体格からいってその組み合わせがベストです 」
まぁそうなんだけど……
杏果の方は朝霞さんに窓側にエスコートされて笑い顔が絶えない。
朝霞さんの杏果の周り世話の仕方は、どこの新婚さんだよ感が満載してる。
キャビンアテンダントの人まで興味津々で見ているし、なんだか又不安になってきた。
飛行機は予定通りの時間に離陸した。
これから約8時間、この窮屈な席で座りっぱなしということが商社マンの俊達と違いなれない俺は、どうやったら眠ってその時間をやり過ごせるか考えてる。
「 シンガポールに着くのは夜中だな、そんな時間でも大丈夫なの? 」
「 ええ、タクシーの手配してありますから 」
「 そんな時間にホテルに入れるの? 」
「 いや、知り合いのセントーサコープのコンドミニアムに行くことになってます。シンガポールに行った時には一回来てみてと言われてるので 」
「 それはいいけど…… 」
俊の知り合いに会うかもしれないと思うと気が重い。
「 コンドミニアムを買ったから前から招待されてたんですが、ちょうどアメリカに出張入ったから勝手に使ってって」
「 そうなんだ 」
あっいないのね、良かった。
げんきんだな俺も。
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